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「良い嫁さんだな…」元中日の人気選手が“48歳で異例決断”…怒鳴られた修行生活「妻や子供の顔が浮かんで…」プロ野球生活15年の男、“その後の人生”
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岡野誠Makoto Okano
photograph byNumberWeb
posted2026/03/30 11:02
中日で活躍した元プロ野球選手、前原博之は58歳の今、岐阜市の新聞販売店のオーナーとして奮闘している
「あのおばちゃんに、何度助けられたことか……。いつも応援してくれて、本当に有り難かった。社長だって『半年で一人前にしないといけない』という愛のムチで怒鳴っているわけですから、受け止めないといけないと思いました」
その社長は、現役時代の指揮官・星野仙一と比べても、怖かったのだろうか。
「星野さんが誰よりも怖いです」
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前原は理由をこう述べる。
「『怖い』の種類が違うかもしれない。星野さんは、決して脅さない。発破をかけるために『お前なんかいらん!』と怒鳴る人もいるじゃないですか。でも星野さんにそう言われたら、すぐに二軍です。言葉にウソがないから、怖いんですよ」
「お前はどんな選手なんだ?」
鉄拳制裁を喰らったことはあるのか。
「僕は殴られてないです。中村武志さんや山本昌さんのように可愛くて、育ってほしい選手には暴力を振るっていた。そして、彼らは必ず起用される。愛のムチなんです。逆にいえば、殴られない若手は期待されていなかった。でも、星野さんには大事なことを教わりましたよ」
試合中、前原がバットを持ってベンチ裏に行こうとすると、星野監督は「何しとるんや! お前の代打はないわ」と止め、具体的に説明を始めた。
「お前はどんな選手なんだ? リードして終盤になったら、守備固めで出番があるだろう。でも、代走から行くかもしれないぞ。だから、試合展開を読みながらキャッチボールをしつつ、自分が代わりそうな選手の打席が近付いてきたら、走れるように準備をしなきゃいけない。俺が交代しようとした時、すぐに行けるような状態をいつも作っておけ」
この教えは野球以外の仕事でも、大いに役立った。
「人に言われてから準備したら遅い。自分の役割を理解して、先を読んで動かないといけない。星野さんがそう教えてくれたんです」
新聞販売店でも星野の指導を思い出し、必死に喰らい付いていった。だが、48歳の肉体は限界を超えていた。
〈つづく〉


