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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「30分で助走のレールもきれいにできたのに」五輪スキージャンプ“異例の打ち切り”はなぜ起きた? 代表コーチに聞いた本音と「五輪の特殊事情」とは
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2026/03/04 11:25
競技中に降り出した雪の影響で最後は途中打ち切りとなったスキージャンプのスーパーチーム種目。その決断はなぜ行われたのだろうか
雪がやんだ後には、雪の積もったランディングバーンの整備などに一定の時間を要する。オリンピックだからこそ、中継時間内に競技を収め、選手の喜ぶ姿を映し、表彰式まで一定の時間内に終わらせる必要性があったのだろう(※打ち切りによって3回目第1グループが無効になったということは、やり直しの場合も同様の処置だった可能性もある。もし、3回目すべてをやり直すとなればさらに所要時間は増え、日本は6位からやり直しだった)。
ましてや現在の五輪におけるスキージャンプは、他競技すべてを押しのけられるような絶対的なコンテンツではない。
観客や関係者の帰宅の足は、主に自家用車とシャトルバスでの輸送に頼っており、一部は路線バスも使用していた。競技が夜遅くに及んでも、運転手の確保ができればそこはなんとかなったはず。とはいえ、翌朝9時からノルディック複合ラージヒルの競技が予定されており、券売のあれこれを考えると翌日以降に振り替えるのも現実的ではなかった。
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結果論にはなるが、完遂することを最優先にするなら、トマシアクを慌ててスタートさせずに天候の回復を待ち、ポーランド、ノルウェー、日本、オーストリアを飛ばすのが最善だったように思える。
ただし、運営側が公平性以上に時間的制約の方に頭がいっていたとすれば、テストジャンパーを挟まずに無理やりトマシアクを飛ばせたのも合点がいく。邪推にはなるが、競技続行が困難であると証明するアリバイ作り的な意味合いもあったのかもしれない。どうですか?この状況じゃ、フェアじゃないでしょう?と。
ユーロスポーツの実況はこう締めくくっていた。
「ドイツと日本はアンハッピーでしたが、彼らがフェアプレーを望むならば、このまま続けることはフェアではありませんでした」
ドイツ人記者は「何とも言えない」と冷静!?
何がフェアだったのかを判断するのは難しい。翌日にたまたま電車で隣の席になったドイツ人記者に「昨日の打ち切りについてどう思う?」と聞いてみると、その返事は意外と冷静なものだった。
「ドイツのヘッドコーチは怒っていたようだけど、何とも言えないところだね。そのまま続けていても、ノルウェーや日本に抜かれてメダルには届かなかった可能性もあったと思うから」
競技ルールには『抗議』の手順もきちんと定められていて、競技終了後15分以内に書面と100スイスフラン(または同等のユーロ相当額)を提出すれば公式に抗議をすることもできた。
日本代表ヘッドコーチの作山憲斗によれば検討はされたものの、結局は見送られたという。メリットを受けるのが日本とドイツのみという状況では、判断は覆らないという予測が働いたのだろう。

