- #1
- #2
Number ExBACK NUMBER
「必要ですか? 翔平」WBC侍ジャパン前監督・栗山英樹が明かした大谷翔平招集秘話…会談は「2人で3分だけ」“栗山メモ”に記された大谷への感謝
text by

金沢隆大Ryuta Kanazawa
photograph byNanae Suzuki
posted2026/02/26 11:02
WBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹監督。大谷翔平の招集秘話を明かした
大谷翔平との会談「2人で3分だけ」
ダルビッシュとの面会を終えて、同月12日には大谷のもとを訪れた。
英語で「two‐way player」、日本語でいう二刀流として前例のない活躍を続ける大谷の成長曲線は皆の予想を超えていた。そんな二刀流の生みの親の1人でもある栗山は、ロサンゼルスで思いがけない言葉をかけられる。それは球場内でエレベーターに乗ったときのこと。ドアが閉まり、目的の階に着くまでのわずかな時間のことだった。球団で働く初老の男性にこう声をかけられた。
「翔平をここまで育てて送り出してくれてありがとう」
ADVERTISEMENT
その言葉の意味を反芻し、うれしさがこみ上げてくる。世界一の選手へと信念を持って導いてきたこれまでの道のりが、野球の本場アメリカで認められた瞬間でもあった。
栗山が大谷と顔を合わせたのは試合後、場所は会見場だった。今までも大事なことは一対一で話し合ってきた。今回も同じように「2人で3分だけ」話をした。
わずかな時間に交わした会話の内容について尋ねた。
すると「食事をしていても『翔平出てね』とか言わない。その感覚の説明は難しいんだけど、本人もそのときの状況にならないとわからないから」と前置きした上で会話の断片を明かしてくれた。
「本人もけがさえなければという覚悟は決まっている感じは分かったし、話の内容はどうやって世界一になるかっていう。誰と誰が出られるんですかとか、戦い方として今のメジャー、球がものすごく速くなっているから、打ち勝って何点も取るのはアメリカ相手ではなかなか難しいですよとか。だから世界一になるイメージをすごく持っての会話だった」
そこに明確な要請と受諾はない。ただ、お互いの思いは十分に伝わっていた。
栗山は帰国してからも球界のOBや12球団の監督や関係者と面会し、選手選考につながる情報を吸収していった。複雑なパズルを解くように模索した形跡がメモに残されている。2022年10月23日には図のようなダイヤモンドを記し、各ポジションに候補者の名前を書き出していた。
メモは続く。
【現状50人までの選手を40人で選べばこうした形になるか やはりセンターライン課題は多い 捕 左投手 遊 中】
日本代表は捕手、遊撃手、中堅手のセンターラインを強くしなければ世界で戦えないというのが栗山の認識だった。この守備の柱をどう組んでいくのか悩みは深かった。
大谷からの着信
11月17日。日の入りはとうに過ぎ、空が黒に近い濃紺に染まったころ、栗山の携帯電話が鳴った。大谷からだった。
