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「病院で叫んだ…この体のどこが悪いんだ」悲痛のがん宣告、25歳で他界した“伝説のモーグル選手”を覚えているか? 長野五輪で見るはずだった「幻のヘリコプター」
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph bySankei Shimbun
posted2026/02/20 11:00
長野五輪直前で胃がんが見つかった森徹さん。闘病を続ける中、会場に駆けつけて里谷多英の金メダルを現地で見守った
海外合宿を終えて帰国し、念のために受けた人間ドックで胃がんが見つかったのだ。しかも、進行の早いスキルス性だった。
両親とともに医師から説明を受けた徹さんは、興奮して立ち上がり、Tシャツをまくり上げ、「この体のどこが悪いんだ」と叫んだという。
長野五輪には間に合わない。徹さんにとって人生そのものだった夢の五輪を、中途半端な理由で諦めさせることはできないと考えた両親は告知を決意。病気を隠していたら無理をしてでも練習に行ってしまうと思ったからだ。
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夢の舞台に手が届くところに近づきながら、奈落の底に突き落とされるかのような残酷な宣告。その絶望感は到底、推し量ることはできない。
兄・敏さんが当時を振り返る。
「僕は海外合宿に出発する前日に徹がひどい病気だということを聞いたんです。衝撃的すぎてあまり何を話したかはっきり覚えていませんが、徹とは『できることをやろう』というような話をしたと思います。その時点ではお互いまだ長野五輪に間に合うという気持ちの方が強かった。手術で悪いところを取れば、またすぐに競技に戻れる……と」
告知から約2週間後、手術が行われた。しかしがんは予想以上に広がっており、一部の切除に留まった。その結果を伝えられた敏さんは「放心状態で何も考えられなかった」という。
一方、徹さんは早くも復帰に向けてのスケジュールを描いていた。〈後編に続く〉

