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「1回締めていい?」フィギュア団体戦決起集会の夜…“りくりゅう”木原龍一がチーム・ジャパンにかけた言葉「俺は史上最強のメンバーだと…」
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野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto / JMPA
posted2026/02/10 17:04
フィギュア団体戦ペアのショート、フリーともに1位となり日本チームに20点を加算して銀メダル獲得の大貢献した“りくりゅう”木原龍一と三浦璃来
「前回の五輪は、団体戦でメダルを取ることが目標になってしまっていたんです。だから団体戦を終えた瞬間に、目標を達成してしまったことで、個人戦に向けて2人が苦しんだのだと気づきました。今回は目標が違うから、やっぱり団体戦に出た方が自信にもなるし、自分たちにもプラスになると話し合いました」(木原)
さらに2人は、4年前の北京五輪での表彰式、そして2024年パリ五輪でのメダル授与式のことを思い出した。
「北京五輪の時に、4年後のミラノでもう一回メダルを取れるように頑張ろうっていう話をしました。パリでも、(坂本)花織ちゃんや(鍵山)優真君達と『必ずまた、団体戦の表彰台に戻ってこよう』と話していたんです」(三浦)
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皆が4年前からの約束を胸に、ミラノ・コルティナ五輪団体戦を迎えている。1週間ほど悩んだ末、「団体戦のショートとフリー、両方に出場する」という決意を日本スケート連盟に伝えた。
団体戦直前、決起集会の夜「1回締めていい?」
三浦の脱臼は思ったより軽傷で、全日本選手権の翌週からは練習を再開できる状態に。そこからは目標が明確になり、カナダでしっかりと練習を積んで、ミラノの地へと辿り着いた。
「4年前とは全然違います。この3年間で2人とも怪我を経験しましたし、うまく行かないこともたくさんあって、2人とも心身ともに強くなったと思います」(三浦)
団体戦直前の夜、チーム・ジャパンの決起集会。宴もたけなわといった様子でリラックスムードのメンバー達に、木原は「ちょっと1回締めていい?」と言って集合させると、こう話しかけた。
「俺は、史上最強のメンバーだと思ってる。13年前に団体戦が始まった時は、日本がこういう立場になるってことは思えなかった。皆が積み重ねてきて、挑戦できるチャンスを持ってる。練習を信じてポジティブに行けば、最後の最後で積み上げてきたものが絶対に出る。みんなでぶっちぎっていこう」
個人戦に余力を残すような戦い方はしない。個人戦だけでなく、団体戦も本気で金メダルを狙う。4度目の五輪となる木原にとって、それは自分自身に言い聞かせるような宣言だった。
「ど緊張ではなく、良い緊張感で」
そして迎えた2月6日の団体戦初日。名前をコールされる直前、2人は落ち着いた様子で観客席に手を振った。
「ど緊張ではなく、良い緊張感で、普段と変わらず本当に周りがよく見えていたと思います」(三浦)
2人で手を握り、見つめ合い、小さく1つうなずく。そこからスタートポーズを取ると、ショートの「Paint It Black」のビートに乗って、一気にトップスピードで滑り出した。高速でリンクを端から端まで滑りぬけ、高さのあるツイストを決めると、イタリアの観客はこの日一番の歓声を上げた。
ジャンプ要素を完璧に決めると、ステップの前には三浦の顔から笑顔がもれる。演技を終えると、2人同時にガッツポーズをみせた。得点は、自己ベストとなる82.84点で首位。三浦は「うわっ」と叫び、木原は飛び上がった。


