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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「これが井上拓真のボクシング」井上拓真がいま明かす那須川天心戦の真相「不安要素は一つもなかった…これだけやったんだから負けるわけないだろって」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2026/02/11 17:00
那須川天心とのWBC世界バンタム級王座決定戦に勝利した井上拓真が、注目の一戦の舞台裏を明かしたインタビュー(前編)
「今回のテーマは自分をきちんとつくり上げること、そしてもう一つは淡々とポーカーフェイスでやること。正直、作戦はいくつかのパターンをつくっていて、ハマらなかった場合は変えていこう、と。でも3ラウンドからはハマったんで(陣営からも)“このままで行け、集中しろ”といった指示でしたね」
4ラウンドを終えた公開採点は3者いずれも38-38。早く追いつけたことで、「よし、いける」という確信になった。以降のラウンドも、絶妙な駆け引きによって己のパンチをヒットさせても、逆に被弾はしなかった。いつでもどこでもカウンターを放つ用意はできていた。打たせずに打つ、拓真の真骨頂が如何なく発揮された。序盤は多かった那須川の手数自体が減っていた。
「打たせない空気感というのも出しているつもりではあります。打ったらすぐに打ち返すという体勢だったり、打った後に自分がその場にはもういなかったり……とにかく動いて、動いて。これをやり続けるのはかなり体力も使うし、大変です。でも勝ちたいという強い気持ちによって集中を持続させることができました」
「一番いいラウンドだと思えた」11ラウンド
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試合をコントロールしても、体力をコントロールするつもりはなかった。公開採点でリードした直後の9ラウンドでも彼は前に出て、テンションを落とさなかった。
「残り4ラウンドなので(リードしているなら)2ラウンドを取って、2ラウンドを逃げるっていうふうに戦い方を変えるボクサーもいる。でも自分はポイント関係なく、自分のボクシングをやるだけだと思っていました」
自分のペースのまま、那須川にペースを握らせないままラウンドを進めていく。拓真が「一番いいラウンドだと思えた」のが11ラウンドだった。接近戦で左フックから右アッパーを連打で見舞う。さらに左ジャブからの右はヒットしなかったが、またもアッパーを振っていく。巻き返そうとする那須川を逆に押し切ろうとした。
「アッパーの連打もそうですけど、盛り上がりをちゃんとつくれたのが良かった。距離の詰め方も含めて11ラウンドは印象に残っています」
リミッターを外したトレーニングの成果と、那須川という好敵手の存在もあって極度の集中を一瞬たりとて切らすことはなかった。
ポーカーフェイスに、淡々と。最後の最後になって「今回のテーマ」を崩してしまうあのシーンが訪れた。


