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ウルフアロンはなぜ“厳しいプロレスファン”に認められたのか?「かつては“他競技の大物”にブーイング」「じつは受けで魅せた」異例デビュー戦の価値
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byMasashi Hara
posted2026/01/10 17:00
丸刈りに黒のショートパンツ姿で初めてのプロレスのリングに上がったウルフアロン(29歳)。ファンはその覚悟に喝采を送った
肝心のプロレスの内容でも期待を裏切った。北尾は試合の流れを無視したような唐突な技出しが多く、時間が経つにつれブーイングの度合いは増していくばかり。結果的に勝利を収めたが、観客の記憶には元横綱の“裸の王様”ぶりだけが残ってしまった。
1997年4月12日、当時IWGPヘビー級王者だった橋本真也とデビュー戦を戦った小川も、大成功とはいかなかった。必殺技STO(スペース・トルネード・オガワ)からの裸絞めで白星スタートとなったが、お世辞にも「プロレスファンから温かく迎えられた」とは言いがたい。むしろ挑発的な言動や振る舞いも手伝い、顰蹙を買っていた。
なぜファンはウルフアロンを認めたのか?
翻ってウルフはどうだったかといえば、ファンからの拒絶反応は皆無だった。それはリングの設営など、新日本プロレスに入団してから一介の練習生と同じように雑用を黙々とこなしている姿を見せていたことと無関係ではあるまい。金メダリストとしての特別扱いを良しとせず、ウルフはゼロからのスタートを選択していた。
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この日、入場ゲートに登場してからの決意表明にも好感がもてた。柔道衣を着ての登場は予想できたが、花道を歩く前にそれを脱ぎ捨て、黒のショートパンツとレスリングシューズというコスチュームに変貌したのだ。しかも、頭は試合当日に切ったばかりという“いがぐり頭”だった。その出立ちは新日本プロレスのヤングライオンの伝統といえるものだった。
ウルフのプロレスに対するピュアな気持ちを見せられたら、北尾や小川のデビュー戦を思い出しながら戦々恐々と待ち構えていたファンも「おお、なんか気持ちがいいぞ。応援してやるか」という気になったはずだ。
初公開となるプロレス技にも拍手を送りたくなった。中でもロープワークを駆使してのパワースラムは観客席から大きなどよめきが起きたほど鋭い切れ味があった。ブレーンバスターからエルボードロップのコンビネーションは重量級レスラーの定石。棚橋の衣鉢を継いだトップロープ最上段からのハイフライフローも意外性に富んでいた。


