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ウルフアロンはなぜ“厳しいプロレスファン”に認められたのか?「かつては“他競技の大物”にブーイング」「じつは受けで魅せた」異例デビュー戦の価値
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byMasashi Hara
posted2026/01/10 17:00
丸刈りに黒のショートパンツ姿で初めてのプロレスのリングに上がったウルフアロン(29歳)。ファンはその覚悟に喝采を送った
じつは「受け」にあったウルフアロンの非凡な才能
しかし、ウルフがプロレスラーとしてのポテンシャルを感じさせたのは攻撃だけではない。冒頭で記したように、じつは評価されにくい「受け」にも非凡な才能が見え隠れしていた。
白眉はEVILから顔面に白い粉をかけられ、視界不良になったところでサソリ固めをかけられた場面だろう。「もしかしたら、このままギブアップ?」という空気も漂っていた。
結局ウルフは必死の形相を浮かべながら耐えに耐え、じりじりとロープに近づき、ロープブレイクに成功した。何気なく手を伸ばしてロープを掴むのではなく、掴むまでのプロセスでしっかりと魅せられるところにレスラーとしての素質の高さを感じずにはいられなかった。
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もちろんEVILがとことんラフプレーを繰り返したからこそ、ベビーフェイスとしてのウルフの反撃が活きたという側面も忘れてはいけない。リングに設置された机に寝かされ、EVIL率いるHOUSE OF TORTUREのひとりで体重150kgを超える巨漢のドン・ファレのフライングボディプレスで圧殺されたシーンは迫力満点かつシュールだった。「オリンピックの金メダリストもプロレスラーになったら、こんなひどい目にあってしまうの?」と思わせるほど、プロレスだからこそ許される異空間での攻防だったからだ。
フィニッシュにも説得力があった。EVILが繰り出した必殺技EVIL(変形の大外刈り)を切り返す形で、腕ひしぎ十字固めから逆三角絞めに移行して希代の悪役を失神させた。忘れてはならない。一流の柔道家は投げに対する反応が人一倍速いことを。この勝利でウルフはいきなりNEVER無差別級王座のチャンピオンベルトを腰に巻いた。
そのベルト姿に、違和感は全くといっていいほど感じられなかった。潜在能力は無限大。“100年に一人の逸材”棚橋はこの日で引退した。そんな棚橋からバトンを渡される形で、プロレス界の未来は29歳のグリーンボーイに託されたのか。


