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ウルフアロンはなぜ“厳しいプロレスファン”に認められたのか?「かつては“他競技の大物”にブーイング」「じつは受けで魅せた」異例デビュー戦の価値

posted2026/01/10 17:00

 
ウルフアロンはなぜ“厳しいプロレスファン”に認められたのか?「かつては“他競技の大物”にブーイング」「じつは受けで魅せた」異例デビュー戦の価値<Number Web> photograph by Masashi Hara

丸刈りに黒のショートパンツ姿で初めてのプロレスのリングに上がったウルフアロン(29歳)。ファンはその覚悟に喝采を送った

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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Masashi Hara

 太股や上腕の筋肉がピクリ、そしてまたピクリ。対戦相手や乱入者たちの度重なる反則にグロッキー状態になった29歳のグリーンボーイの手足は小刻みに痙攣していた。思わず目を見開き、凝視するしかなかった。

 まるで“受けの達人”として70~80年代のプロレス界を席巻したハーリー・レイスの所作を見ているかのようだ。デビュー戦で、ここまで細かい表現ができるプロレスラーを見たことがない。

甘くないプロレスファン…ブーイングを浴びた北尾光司

 最近はすっかりプロレスの現場から遠のいているが、20代の頃は『週刊プロレス』の記者として大半の都道府県を回った。ラジカルな紙面作りが売りの時代だっただけに、取材現場でいきなりレスラーからお茶をぶっかけられたり、胸ぐらを掴まれスゴまれたり、それなりに貴重な経験を積んだと思う。今回は柔道家時代のウルフに何度か取材したことが縁で、久しぶりに会場に足を運んだ。

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 1月4日、東京ドームで超満員札止め4万6913名の大観衆を集めて行われた新日本プロレスの『WRESTLE KINGDOM 20』。棚橋弘至の引退試合とともに世間が注目したウルフアロンのプロレスデビュー戦は、想像を遥かに上回る衝撃を与えてくれた。

 一般的にプロレスラーとしての初陣といえば、ただガムシャラに兄弟子にぶつかっていき、最後は玉砕するというイメージがあった。もっとも他競技で頂点を極めたエリートであれば話は別だ。“飛び級”でいきなり大舞台が用意され、スポットライトを浴びることになる。元横綱の北尾光司やバルセロナ五輪柔道95kg超級銀メダリストの小川直也が、その最たる例だろう。

 しかしながら鳴り物入りでプロレスに転向したとしても、必ずしも大成するとは限らない。北尾などは適応に苦しんだ典型だろう。1990年2月10日、筆者はその現場である東京ドームにいたが、ハルク・ホーガンを彷彿させる黄色を基調としたタンクトップをビリビリと破った瞬間から観客の失笑を買った。

 北尾本人はリングに上がっただけでスターになりきっていたが、観客はきちんと値踏みしていた。時には「帰れ!」という怒号が飛び交ったほどだ。評価するのは本人ではなく、あくまで見ているファン。評価は第三者に委ねるという目線が、北尾には決定的に欠けていたのではないか。

【次ページ】 なぜファンはウルフアロンを認めたのか?

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