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《箱根駅伝直前プレビュー》黒田朝日、佐藤圭汰、吉居駿恭…エースはどこに配置されるか? 区間エントリーから読み解く「4強」の戦略 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byShiro Miyake / Yuki Suenaga / AFLO

posted2025/12/31 10:00

《箱根駅伝直前プレビュー》黒田朝日、佐藤圭汰、吉居駿恭…エースはどこに配置されるか? 区間エントリーから読み解く「4強」の戦略<Number Web> photograph by Shiro Miyake / Yuki Suenaga / AFLO

各大学の命運を左右するエース格の選手たち。左から黒田朝日(青山学院大学)、佐藤圭汰(駒澤大学)、上原琉翔(國學院大學)、吉居駿恭(中央大学)

 上記3つの大学が警戒しているのが、前回5位だった中大の「1区」だ。前回は吉居駿恭(当時3年)が序盤で集団から抜け出し、そのまま独走。4区までトップを走る礎を築いた。最上級生となった吉居は補欠でのエントリーだが、今回も1区で来るのかどうか。あるライバル校の監督が話す。

「もし、吉居君が1区で来るとなると、スピードレースになることは明らかなので、速い流れに対応できる選手を配置する必要が出てきます」

 そんな他校の警戒心を、中大の藤原正和監督は重々承知している。

「駿恭は4区、7区、1区と経験がありますが、総合優勝を考えた時には、出来れば7区に置きたいという思いもあります」

 これは本音か? それとも陽動作戦か? こうしたコメントで他校の監督が考えさせられるとしたら、すでに中大が主導権を握っているということになる。

 中大のエントリーを見ると、2区の溜池一太(4年)、3区の本間颯(3年/前回3区区間賞)、5区の柴田大地(3年)は、アクシデントがなければ確定と考えていいだろう。

 一方で、吉居のほかの補欠メンバーには、今やエース格のひとりとなった藤田大智(3年)、出雲駅伝1区区間賞の岡田開成(2年)と実力者が並ぶ。優勝争いの鍵を握る1区、4区、7区をこの3人で分担するというデザインが見えてくる。

 中大は30年ぶりの総合優勝を狙っている。藤原監督は「総合優勝できれば、次の10年間で強い中大を作る土台になるはずです」と今大会に懸ける思いは強い。補欠登録されたメンバーをどのように配置するかが悲願達成の鍵となるはずだ。

「4強」以外にも見どころ多数

 そして、4強以外にも目が離せない大学は多々ある。

 往路優勝への期待が高まっているのは前回4位の早稲田大学だ。2区には、今季トラックで好成績を残した主将の山口智規(4年)が3年連続でエントリーされた。

 そして5区には「山の名探偵」のニックネームを持つ工藤慎作(3年)が3年連続で起用される。前回は歴代3位となる1時間09分31秒で走った工藤は、7月に開催されたFISUワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンで金メダルを獲得したことからも明らかなように、走力自体が上がっており、1時間8分台での区間新の樹立に期待がかかる。ふたりの活躍次第では早大の往路優勝も夢ではなく、4強を揺さぶる存在になりそうだ。

 また、補欠登録されている鈴木琉胤、佐々木哲、堀野正太の1年生トリオがどう起用されるかにも注目したい。

 今回の箱根駅伝の見どころとしてもうひとつ紹介したいのは、「花の2区」での区間記録更新への期待感だ。前回大会では東京国際大学のリチャード・エティーリ(3年)が1時間05分31秒の区間新記録をマークしており、今大会ではその更新に期待がかかる。

 エティーリ以外にも今回の2区には実力者が揃っており、青学大の黒田、早大の山口、中大の溜池、城西大学のヴィクター・キムタイ(いずれも4年)らの間でハイレベルの競走が繰り広げられることが予想される。コンディション次第では、前人未到の1時間4分台への突入もあるかもしれない。

 また、関東学生連合チームでは、前回8区で好走を見せた東京大学の秋吉拓真(4年)が、エース級の投入が予想される7区にエントリーされた。秋吉は「競走が激しい区間で、今回は区間上位争いが出来れば」と話しており、2度目の箱根駅伝でのチャンスで実力を発揮したい。

 21チーム、210人が走る箱根駅伝は、それぞれの区間、そして選手に見どころがある。

 1月2日午前8時、いよいよ大手町で号砲が鳴る。

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