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《箱根駅伝直前プレビュー》黒田朝日、佐藤圭汰、吉居駿恭…エースはどこに配置されるか? 区間エントリーから読み解く「4強」の戦略

posted2025/12/31 10:00

 
《箱根駅伝直前プレビュー》黒田朝日、佐藤圭汰、吉居駿恭…エースはどこに配置されるか? 区間エントリーから読み解く「4強」の戦略<Number Web> photograph by Shiro Miyake / Yuki Suenaga / AFLO

各大学の命運を左右するエース格の選手たち。左から黒田朝日(青山学院大学)、佐藤圭汰(駒澤大学)、上原琉翔(國學院大學)、吉居駿恭(中央大学)

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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Shiro Miyake / Yuki Suenaga / AFLO

 12月29日に第102回箱根駅伝の区間エントリーが発表され、いよいよ本番ムードが高まってきた。近年は有力校ほど主力選手を補欠に入れ、ライバル校に作戦を悟らせないケースが見受けられる。1月2日、1月3日の当日変更まで、各監督の思惑を想像してレースを待つのも楽しい。

 11月に行われた全日本大学駅伝のレース直後、3位に終わった青山学院大学の原晋監督は3連覇を狙う箱根駅伝の見通しをこう話した。

「出雲駅伝優勝の國學院大學、全日本大学駅伝を制した駒澤大学、2位の中央大学、そして青山学院大学の4強になるでしょうね」

 その4強について、区間エントリーから見えてくる戦略を検証していこう。

 まずは過去11年間の箱根駅伝で8度の総合優勝を誇る青学大。前回の優勝メンバーから6人が抜け、その穴をカバーできるかどうかが3連覇への鍵となる。

 ただし、絶対的な安心材料がある。区間エントリーでは補欠に登録された主将の黒田朝日(4年)の存在だ。黒田の安定感は青学大史上3本の指に入るだろう。過去2回、2区を走って、前々回は区間賞、前回は従来の区間記録を上回るタイム(区間3位)で走り、必ず順位を上げて総合優勝に貢献してきた。また、2025年2月に行われた大阪マラソンでは日本学生記録もマークしている。順当ならば今回も2区で主導権を握るはずだ。

 前回まで5区を走った若林宏樹、6区を走った野村昭夢というふたりの区間記録保持者が卒業した穴を誰が埋めるかについては、区間エントリーには5区に松田祐真、6区に石川浩輝(共に1年)が登録されている。原監督は「山には1年生の秘密兵器がいます」と事前に話しており、松田に上り、石川に下りの適性を見出しているのかもしれない。

 また、8区には2年連続で8区の区間賞を獲得している塩出翔太(4年)、9区にはこの1年で成長を見せた佐藤有一(4年)が登録されており、終盤でもつれた場合の対策となっている。当日変更を含め、原監督の作戦が楽しみだ。

青学大の「連覇阻止」を期す有力校の戦略

 前回の箱根駅伝で総合2位だった駒大は、全日本大学駅伝の主要区間を走った帰山侑大、佐藤圭汰、山川拓馬(すべて4年)、谷中晴(2年)といった主力メンバーが補欠でのエントリーとなった。特にエースの佐藤は他大学の実力者が揃う2区での出場が期待されているが、正直なところ戦略は読みづらい。藤田敦史監督が実力者たちをどのように配置していくのかが注目される。

 6区には1年生の時に山下りで区間賞を獲得した伊藤蒼唯(4年)が登録された。前回は区間2位ながら57分38秒をマークしており、56分台への突入も視野に入れつつ、復路でのゲームチェンジャーになれる資格は十分。4強のなかで山下りでの計算が立つ選手がいるのは駒大だけなので、復路は有利にレースを進められるかもしれない。

 前回3位の國學院大は主将の上原琉翔(4年)が2区に登録され、他校のエースたちと競う。その一方、主力の青木瑠郁と高山豪起(共に4年)、野中恒亨(3年)が補欠での登録になった。

 野中はこの1年で“駅伝力”が大幅にアップした。出雲駅伝、全日本大学駅伝でともに3区を担当し、留学生と堂々と渡り合うレースを展開。今回の箱根駅伝でも3区など主要区間での起用となる見込みで、大きな期待がかかる。

 國學院大の課題は、青学大同様「山」の攻略となる。前回は5区で区間14位、6区で区間16位と苦戦したこともあり、総合優勝に向けてはなんとしても克服しなければならない課題だ。

 今回、5区には高石樹(1年)、6区は前々回に59分37秒で区間10位だった後村光星(3年)がエントリーされており、復路で主導権を握るためにも成長を見せたいところだ。

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