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ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
さらば番長…「現役時代と監督時代、どっちがきつかった?」三浦大輔が語ったDeNAでの濃密な5年間「これからはファンの方々と同じ気持ちで」
text by

石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2025/12/22 11:05
監督の座を退いた三浦が5年間の濃密な時間を振り返った
チームの主力で、三浦の就任当時キャプテンだった佐野恵太は「三浦さんに美味しいお店を尋ねると、教えてくれるだけじゃなくて『じゃあ一緒に行くか』って誘ってくれるんですよ。えっ、って思って。そんな監督には出会ったことがないですからね」と、感嘆しながら教えてくれたことがあった。
「いや、最初は食事に誘うのはどうかなと思ったんですよ」
三浦はちょっとだけ苦笑して言った。たしかにチームの規律を考慮し、プライベートで選手たちとは一線を引く首脳陣は多い。
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「でも僕は逆にいいコミュニケーションが取れる場だと割り切って選手たちと付き合える自信があったし、できると思っていましたからね。結果的に選手たちの気持ちを知ることもできましたし、監督をしていく上でプラスになることのほうが多かったですね」
選手と近いゆえの葛藤
ただ選手との距離が近いゆえに、苦しかったこともある。それは選手にスタメンやローテーションを外す旨や、ファーム行きを通告することだった。避けては通れない、誰かに任せることはできない監督としての職務である。
「何としても試合に出たいという選手の気持ちはわかります。とくにスタメンで出つづけている野手やローテーションピッチャーが外れるようなとき、直接伝える瞬間というのは、正直、きついものがありました。選手は『わかりました』と言いますけど、内心はクソって思っているはずです。
けど、その思いを胸に次の出番に向かっていけるようなモチベーションを与えるのも、監督の役目だと思います。ファーム通告もしかり。ファーム監督時代は『明日から一軍で頑張ってこい』とか、戻ってきたら『また一軍目指そうぜ』って前向きなことを言えましたけど、一軍の監督として『明日からファームに行ってくれ』と言うのは、やっぱりつらかったですね」
冷静沈着、温和で優しい男——。
これが三浦の一般的なイメージだろう。しかし前出の佐野は「普段はそんなことないですけど、試合中、たぶん怒っているんだろうなと思いながら采配していることがあって、そういうときはベンチがピリッとするんでわかりますよ」と、証言している。そう伝えると三浦は笑った。

