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「ドラフト7位で1位級のポテンシャル」スカウトが実力を確信するカープの新人右腕・高木快大のトミー・ジョン手術で始まるプロ生活
posted2025/12/22 17:01
入団会見の撮影でポースをとる高木。背番号は46をつける
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前原淳Jun Maehara
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JIJ PRESS
新たな門出を迎えた広島の新人選手たちは、緊張しながらもプロ野球選手となる希望にあふれていた。12月15日の「2026年度新入団選手発表会見」で高砂に上がった選手がみな利き手でマイクを握る中、ドラフト7位の高木快大(中京大)は利き手ではない左手でマイクを持ち、周囲よりもやや控えめに意気込みを語った。
「質の高いストレートが持ち味だと思います。カープのエースを担える投手を目指してやっていきたい。1日でも長く選手人生を送れることを目標としています」
入団1年目の具体的な目標を口にしなかったのには理由がある。会見直前の発表で、11月15日にトミー・ジョン手術をしていたことが明かされた。この日の朝にサポーターが外されたばかりで、26年は一軍マウンドはおろか、二軍でも公式戦のマウンドに上がることは難しい。ルーキーイヤーはリハビリの日々となる。
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ただし近年は、入団後にトミー・ジョン手術を受けるケースは珍しくない。今年はソフトバンクのドラフト4位・相良雅斗投手(岐阜協立大)もトミー・ジョン手術を行っているが、高木の場合はメディカルチェックで異常が見つかったのではなく、ドラフト時からトミー・ジョン手術を受ける可能性が高いとみられていた。
少なくとも1年は実戦で投げられない可能性が高い以上、球団としては育成ドラフトでの指名に切り替える選択をしても不思議ではない。むしろ、それが妥当な選択だろう。だが、広島はドラフト7位での指名に踏み切った。菊池涼介や床田寛樹を担当した松本有史スカウトが高木を強く推したからだ。
スカウトが確信するポテンシャル
「手術してリハビリが終われば、ドラフト1位の活躍をするポテンシャルがあると球団に推薦しました。球の角度や変化球の腕の振りは森下(暢仁)を見ているようで、伸びしろしかないと思う」
支配下選手登録枠をひとつ使う価値のある逸材と判断した。高木を育成ドラフトで狙う球団がいくつかあることはドラフト前からわかっていて、実際に育成ドラフトに回せば他球団に指名されていたという。
「(支配下選手登録枠)70人を69人でやることになるので、球団としてもリスクがあったとは思います。でも、ドラフト7位でドラフト1位級の選手を取れたとも捉えられる。賭けかもしれないけど、それだけの価値がある投手だと思っています」
4年間追い続けた松本スカウトは確信している。高木は肩、肘の使い方が柔らかく、しなやかなフォームから繰り出される直球は最速153キロ。球速以上に切れと伸びのある球筋も特長だ。3年春にはリーグ史上3人目となる完全試合を達成し、大学ジャパンにも選ばれた。24年のドラフト終了後には、"来年のドラフトの目玉候補"として名前が挙がるほど注目されていた。素材は申し分ない。

