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「大きく成長したと思います」藤田敦史監督も認める駒澤大学主将・山川拓馬の頼もしき存在感とチームへの献身

posted2025/12/26 10:00

 
「大きく成長したと思います」藤田敦史監督も認める駒澤大学主将・山川拓馬の頼もしき存在感とチームへの献身<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

11月の全日本大学駅伝でアンカーを務め、1位でフィニッシュする山川拓馬

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加藤康博

加藤康博Yasuhiro Kato

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Tadashi Hosoda

 負けず嫌いで練習では自分を極限まで追い込む。駒澤大学の主将、山川拓馬(4年)は藤田敦史監督の現役時代と似たところがある。その藤田監督がこんなエピソードを教えてくれた。今年2月の日本学生ハーフマラソン選手権での出来事だ。

 FISUワールドユニバーシティゲームズの代表選考レースとして行われたこの大会で、山川は優勝候補のひとりだったが、前回の箱根駅伝後に気管支を患った影響もあり25位に沈んだ。その夜は遅い時間になってからの帰寮となったが、山川はウィンドブレーカーを着込み、ひとりで走りに出たという。

「よっぽど悔しかったんでしょうね。私もそういう選手は嫌いじゃないですし、強くなるためにはそうした芯の強さが必要です。ただ一方で、感情に流された行動ということもできます。その時点で山川がやるべきは気管支をしっかり治すことであり、レース直後に無理して走ることではありません。私は何も言わずに走りに行かせましたが、戻ってからかなり厳しく指導しました」

 藤田監督も駒大1年時の箱根駅伝でチームが12位に終わった後、悔しさから大学で行われた慰労会に参加せずに走りに出た過去を持つ。それを止めにきた当時の大八木弘明監督に対し、「負けて悔しくて、練習することの何が悪いんですか?」と食ってかかった。

「ですので私も山川の気持ちはわかるんです。ただ主将は自分の行動ひとつがチームに影響を及ぼします。無理して練習でケガをしたら、チームがどうなるかは少し考えれば分かるはず。感情に流されてはダメなんです」

 山川も頭では分かっていたが、この時はどうしても悔しさが勝ってしまったと言う。

「監督には以前から『それだから大切なレースで走れないんだ』と言われていたんです。主将になったのだし、さすがに変わらないとまずいと思いました」

夏合宿で見せた成長

 そこから山川の行動が変わった。掲げたテーマは故障せず、練習を継続すること。1年時から駅伝でレギュラーの座を摑み、学生三大駅伝三冠に貢献するなど、その力は誰もが認めるところだったが、故障が多く、3年生まで夏合宿、そして箱根駅伝前の強化合宿ですべてのメニューをこなしたことがなかった。主将となった今季はその轍を踏まないように努めた。

「今までは故障しても心のどこかで『試合で走れば大丈夫』という思いがあったのですが、主将になったからには常に練習で引っ張り、かつ結果も出さないといけない。走りたいという感情を抑え、これまで以上に故障対策に取り組みました」

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