「藤浪が161球投げさせられた」事件…金本知憲の“懲罰采配”、藤浪晋太郎が明かした「あの日のこと」大阪桐蔭で甲子園連覇→阪神エースの“苦悩” 

　もっと遡れば、プロ野球史に名を残すほどのスターであり、功労者であった江夏豊や田淵幸一は球団から放出されている。田淵がミスタータイガースこと掛布雅之に「次はおまえやぞ」と言ったというエピソードは有名である。確かに、その頃からスターに冷たい球団だというイメージは避けがたくある。

　藤浪はもがいていた頃の自分を客観的にこう見つめる。

「悩んでいたんだろうなっていうフォームをしていますよね。そんなんでストライク入るわけないよなって。それでも毎日、一生懸命練習してたんですよ」

ずばり問う「阪神で心は折れなかったのか？」

ADVERTISEMENT

　進むべき方向を間違えていることに気づいたときには、すでに手遅れだったという。

「いろいろやり過ぎると、本当にわからなくなっちゃうんですよ。人間って、（昔と）同じ感覚では投げられないんですよね。OSを変えちゃったものは。もう、戻そうとして戻るもんではなかったですね」

　藤浪のプロでのキャリアを語るとき、とかくメンタルの弱さを指摘されがちだ。だが、並の神経だったら、とっくにボールを投げられなくなっていたのではないか。

「心がポキッと折れることはなかったですね。今まで一回も」

　そう言ったあと、藤浪はこう付け加えた。

「何を言われようが、どんだけ叩かれようが、成績が悪かろうが、もう俺は……ってなってしまうことはなかった。こんな状況からでも、まだまだうまくなれると思っていたんで。食欲もありましたし。食が細くなるということはないんで。そういう意味ではメンタルは強いかもしれないですね」

◆◆◆

　2016年以降、苦しい時期が続いた藤浪。メジャー挑戦の希望を球団に伝えたのは、2020年のオフのことだった。

＜続く＞

#2に続く

「僕は帰ってきました」阪神・藤浪晋太郎がかつて夢見た“満員の甲子園でのカムバック”…「米国に行かせてください」メジャー移籍を阪神に訴えた日