第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER

「才能がすべてではない…」雑草軍団、中央学院大学主将の近田陽路が心に期す、最後の箱根駅伝でのシード権獲得 

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杉園昌之

杉園昌之Masayuki Sugizono

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photograph byYuki Suenaga

posted2025/12/18 10:01

「才能がすべてではない…」雑草軍団、中央学院大学主将の近田陽路が心に期す、最後の箱根駅伝でのシード権獲得<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

箱根駅伝予選会ではチームトップタイムを記録し、中央学院大学をトップ通過に導いた近田陽路

「もう苦手意識はないです。2区は権太坂を過ぎてから、順位が決まってくると思います。そこで失速するか、ペースを上げられるかどうか」

 チーム目標である7年ぶりのシード権獲得から逆算し、自身で区間順位のノルマを決めていた。自らに強く言い聞かせる。

「何としても、区間ひと桁を取らないと。区間タイムの最低ラインは(1時間)6分半。ますます高速化が進んでいますし、5分台を狙う気持ちでいきます」

 無論、一筋縄ではいかない。予行演習のつもりで臨んだ全日本大学駅伝では、エースの集まる2区で厳しい現実をつきつけられた。区間15位は想定外の結果。2週間前に出走した予選会の疲労が抜けていなかったこともあるが、反省すべき点は多い。最初の5kmを約14分30秒で入ってしまい、流れに乗れなかったという。データを見返すと、箱根駅伝シード校のほとんどは14分ひと桁台だった。

「箱根駅伝の2区でも前半は同じようなペースになると思います。あのスピード感は実際の駅伝でしか学べないこと。勉強になりました」

 たすきをもらう位置が後ろになり、ハイペースで突っ込むのをためらってしまったのだ。足りなかったのは勇気。自らの課題は、自身がよく分かっている。15位で終わった全日本大学駅伝のあと、ひとりでペースを刻み、狙い通りのタイムを出す練習にもより精を出すようになった。あらゆる状況に対応し、流れを引き戻すのも、勢いに乗せるのもエースの役割。走力の積み上げはもちろんのこと、あらためて重要なポイントを口にする。

1秒を追い込むメンタル

「大事なのは、何が何でも勝つぞという気持ち。箱根駅伝予選会でも、川崎監督に言われ続けているラスト1kmで先頭に出ました。そこはメンタルの問題。僕だけではなく、チーム全員の共通認識としてあります。箱根駅伝では1秒で順位が変わりますから」

 主将の言葉には力がこもる。叩き上げで上り詰めた自負もある。エリートランナーたちへの対抗心を隠そうとはしない。愛知県豊橋市に住んでいた中学生の頃、隣町の田原市ですでに全国区の選手として注目されていた吉居駿恭の顔はすぐに頭に浮かぶ。ずっと背中を追ってきた存在である。

「いつかは勝ちたいと思っていました。その舞台が箱根駅伝だったら最高ですね。区間は違うかもしれませんが、僕がそういう選手たちに勝てば、才能がすべてではないと証明できると思います」

 努力は才能に勝る――。信じるか信じないかは自分次第。伝統の“なにくそ根性”を持ち、きょうも練習で追い込んでいる。

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