第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「どこよりも距離を踏んできた」目標の『古櫻復活』に向け、過去最高の自信とともに箱根駅伝に挑む日本大学の4年生たちの気概
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田坂友暁Tomoaki Tasaka
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/16 10:00
山のスペシャリスト、鈴木孔士(左・129番)は前回の雪辱を果たすべく5区に挑む
少しずつ本来の走りを取り戻した中澤は、箱根駅伝予選会で自己記録を上回る1時間03分06秒をマークし、シャドラック・キップケメイ(3年)に次ぐチーム2番手でフィニッシュ。ようやくチームに貢献することができたという安堵感を得られた。
主将として走る最後の箱根駅伝。中澤の表情から気負いは感じられない。復路の8、9、10区を希望する中澤は、その理由をこう語る。
「もちろん往路の結果にもよりますが、どんな順位であっても絶対に復路で粘らなければならない場面が出てきます。日大は集団走は強いですが、単独走はまだまだ弱い。だからこそ、単独走になりやすい復路で、チームが『日大はまだまだできるんだ、チャンスがあるんだ』と思えるような熱い走りを見せたい。それが主将としての役割だと思います」
自分の殻を打ち破る爆発的な走り
副将の大仲は、國學院大學の上原琉翔、嘉数純平(共に4年)らと沖縄県の長距離を盛り上げるためにも「攻めて攻めまくる走りをしたい」と決意を新たにする。中澤が走れないときもチームを走りで牽引し続けた存在である。
「自分たちはどの大学よりも距離を踏んできました。その積み重ねが選手一人ひとりの自信につながっていると思います。特に今年の夏合宿を終えてからは、皆が自信を持ってスタートラインに立てるようになりました」
チームを客観的に見る役割を担ってきた大仲は、冷静に現状を分析する。自分の走りに対しても常に冷静で、どこか他人事のような雰囲気すらあるものの、その内側には誰よりも熱い炎が燃えさかっている。
「安定感は自分の持ち味かもしれませんが、それだけでは上にいけない。自分の殻を破るには、もっと爆発的な走りが必要だと感じています。だからこそ最後の箱根駅伝はこれまでのスタイルを打ち破って、攻めて、攻めまくるような走りをしたいですね」
新雅弘監督が就任してから3年目を迎える。選手たちが新監督に課された地味で苦しいトレーニングをこなしていくうちに、数字には自然と積み重ねの結果が表れ始めた。その数字により「箱根駅伝に出られたらいいなぁ」という緩く冷めた雰囲気が蔓延していたチームに刺激が入り、徐々に「箱根駅伝で勝負したい」と熱い思いを持てる集団へと変化していった。
心は熱く、頭は冷静に。チームの熱量が高まれば、ややもすると立てる目標が高くなり過ぎてしまいがちだが、中澤主将からは「シード権争いをすることが目標です」と、地に足が着いた言葉が返ってくる。
前回大会は直前から当日にかけて体調不良者が続出し、力を出し切る前に終わってしまった。そのリベンジを果たす準備は整った。鈴木、中澤、大仲の3人が柱となって4年生の力を集結し、日大が勝負できる集団だと証明する日は近い。


