第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER
「今度こそ主役のひとりになりたい」大東文化大学のキーマン・棟方一楽が箱根駅伝“花の2区”でシード権獲得に向け発揮する勝負度胸
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小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuki Suenaga
posted2025/12/11 10:00
前回に続き、箱根駅伝で2区を務める予定の棟方一楽
棟方は今季、箱根駅伝の2区を走る心づもりで練習を積んできたという。
「ハイレベルなレースで、今度こそ自分もその主役のひとりになりたい。そう思って、スピードと持久力を磨いてきました。次の作戦はもう自分の中では決めていて、前半から中盤は抑えていって、前回失速してしまった権太坂(13km過ぎからの難所)から逆に上がっていきたい。具体的には1時間6分30秒切りを狙っています」
史上最高レベルの2区となった前回は、区間新記録をマークしたR・エティーリ(東京国際大学・当時2年)を筆頭に、好記録が続出した。それでも、1時間6分30秒切りは6人にとどまる。良い走りをし、チームに流れを持ってくるのはエースとしての責務だろう。
今シーズン、チームは駅伝で苦しんでいる。箱根駅伝予選会は下級生が奮闘するも8位、全日本大学駅伝は序盤から流れに乗れず13位と見せ場を作れなかった。両大会に4年生で出場したのは入濵のみ。下級生中心のオーダーを組まざるを得ないような状況だ。
4年生への思いとエースならではの勝負度胸
主将の赤星龍舞(4年)らが立てたチームのスローガンは「歴史への礎~あの場所でやり返す~」。力のある下級生のために、最上級生はあえてその礎になるという、献身的な思いが伝わってくる。そんな先輩たちの話になると、棟方の口調が熱を帯びた。
「本当に1年生の頃からよく面倒を見ていただいて、キャプテンもそうですし、他の先輩方にも色んなことを教えてもらいました。入濱さんにも見習うことがまだまだたくさんあるので、卒業までに全部盗んで自分のものにしたいと思ってます。1年の時からお前が鍵だと言ってもらって、その思いには意地でも応えたい。走りで恩返しがしたいですね」
もともと物怖じしない性格だ。「大きな大会になればなるほどワクワクする」という勝負度胸もエース向きといえる。上り坂にも苦手意識はなく、中高生の頃から「家族で山の方へ行って、坂ダッシュとかやってました。雪の中でも全然走ってましたよ」と屈託なく笑う。
11月の上尾シティハーフマラソンで、自身が持つU20の記録を國學院大學のルーキー野田顕臣(1年)に抜かれたが、その感想にも実直で負けず嫌いな人柄がにじみ出ていた。
「悔しさはまったくなくて、本当におめでとうって思います。1年生であのタイムを出したのは、すごいという言葉しか見つからない。僕自身は、次はアンダーじゃなくて日本記録、いつか本当の日本記録を抜きたいなって気持ちが芽生えたりもしました」
自分の可能性を信じる限り、成長が止まることはないだろう。チーム全員でその意識を共有できれば、低い下馬評もきっと覆せるはずだ。
チームの目標は、2年ぶりのシード権獲得。
青森から駆けつける両親や友人、信頼してくれる監督や仲間たちの前で、チーム浮沈の鍵を握る3年生エースは、ひと皮むけた姿を見せることができるだろうか。


