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家庭科の先生を辞めてプロレスラーになった娘…父の本音「いつまで続けるんだ」 レディ・Cが直面した世間の壁と批判「やっぱり試合を見てほしいんです」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/12/07 17:01
家庭科の先生から転身し、今年5周年を迎えたレディ・C
SNSで「弱いじゃないか」、「また負けたのか」と批判してくるのは、試合を見ずに結果だけで判断している人たちが多いとレディは感じている。
「会場で見てもらって、その上で批判されるなら参考にもできると思うんですけど。やっぱり実際に試合を見てほしいんですよ」
そう言うレディはミュージカルが好きで、学生時代は劇団四季の舞台に通い詰めた。プロレスが本格的に好きになったのも会場観戦がきっかけだ。
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「終電で帰って始発で出勤するような」教員の激務に疲れ果てていた頃、同僚に聞いてプロレスを知った。ある時、後楽園ホールに新日本プロレスを見に行く。
「ちょうど修学旅行の時期で授業がなかったんです。“あ、今日なら早退して当日券の列に並べるな”って」
初めて会場で見る“生”のプロレスは、映像とは桁違いの迫力だった。
「体がぶつかり合った時の音とか飛び散る汗とか、こんなに凄いのかって。選手が体を張って、命懸けで闘ってることが伝わってくるんですよ」
かつて土下座した父との“今”
プロレスに興味があるなら、一度でいいから会場で見てほしいとレディは言う。会場に行くとファン同士の交流も活発になる。これは筆者の私見だが、好きなものについて語り合えるファン仲間がいればSNSで選手を“はけ口”にする必要もなくなるのではないか。
「劇団四季を見ていた頃は、劇場に行けば誰か知り合いがいたんですよ。終わってから感想を話すのがまた楽しくて。私のファンの人たちも大会の後にオフ会をやってるみたいです。嬉しいし羨ましくもありますね。そこはもう、レスラーになった自分は入れない世界なので」
レディには、誰よりも試合を見てほしい人がいる。ほかならぬ父親だ。彼女は親の反対を押し切ってプロレスラーになった。
「最後は父に土下座しました。“プロレスは今しかできない。3年やって、それで芽が出なかったら、その後も続けるかどうかあらためて考えさせてください”と」
約束の3年が過ぎてしばらく経ち、今年になってテレビ番組の取材が入った。今も「そのアザはどうしたんだ。試合でやったのか」、「いつまで続けるんだ」と聞いてくる父も含めた、家族とのドキュメンタリー。プロレスラーであることを認めてほしい娘に向き合う父の姿は“頑固”とか“厳しさ”とはほど遠いものだった。曰く、試合の結果を見ると負けることが多いし、それをネットで批判されている。とても見ていられない……。
「ただ反対してるんじゃなくて、心配してくれてるんだっていうのが分かりました。世代的にも、プロレスといったら怖い、痛いというイメージですもんね。私だって見る前はそうでしたし」


