第102回箱根駅伝(2026)BACK NUMBER

「悔しさを絶対に忘れてはいけない」前回落選の雪辱を果たすべく、改革を断行した東海大学が過ごした1年と箱根駅伝への戦略 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byTadashi Hosoda

posted2025/12/15 10:01

「悔しさを絶対に忘れてはいけない」前回落選の雪辱を果たすべく、改革を断行した東海大学が過ごした1年と箱根駅伝への戦略<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

全日本大学駅伝での永本脩。両角速監督は「次世代のエース」と期待をかける

「永本はこれまで怪我が多くて、前回の箱根駅伝予選会も走れなかったんです。学生三大駅伝は全日本が初めてだったんですけど、上々の走りをしてくれました。実は、永本は1500mの熊本県記録(3分43秒91)を持っているんです。今年の7月に19年ぶりに塗り替えたのですが、スピードを持っていますし、10000mの長い距離にも対応できる。これからもっと伸びていくと思いますし、自分ひとりで走っていけるので駅伝にも向いています」

 永本の特長は高い競技力だけではない。物事を常にポジティブに捉えるので、チームに明るく前向きな雰囲気を生み出すという。

「性格が非常に明るくて、素直ないい子です。4年生になったら南坂(柚汰・3年)とともにチームのエースになるでしょう」

 両角監督の期待は大きく、箱根駅伝ではエースの花岡と永本が軸になるだろう。

 その一方で両角監督が歯がゆい印象を抱いているのが鈴木天智(4年)だ。全日本大学駅伝では出走メンバーから外れた。その後、箱根駅伝の選考レースとなる上尾シティハーフマラソンでは62分28秒の自己ベストでチーム内トップだったが、優勝した青木瑠郁(國學院大學4年)が60分45秒を出しており、鈴木は全体で25位だった。

「鈴木は箱根駅伝予選会で失敗、さらに全日本大学駅伝のメンバーから外れて、ここ(上尾)だよっていう中でうまく合わせることができなかった。62分を出してがんばったのですが、トップと2分ぐらい差がありますからね。彼が持つ力からすればもっと行けると思いますし、なぜ大事なレースに合わせられないのかという思いもあります。やはり、レースに向けてしっかり整えることはすごく大事なことなので。ただ、それは鈴木だけの問題ではなく、東海大全体の課題でもあるんですが……」

 鈴木が調子を取り戻し、4年生がしっかりと揃えば、東海大は少なくとも箱根駅伝でシード権を狙えるだけの力を有している。だが、その力は実際のレースの順位と比例しない。

「なぜ、東海大はレースに合わせられないのかっていうことだと思うんです。分かっていてもなかなかうまく変えられず、本当に難しい。それでも気持ちの持ち方として、今回の箱根駅伝は『絶対にシード権を獲るぞ』っていうのを合言葉にして、やっていきたい」

超高速化への対策

 今回の箱根駅伝は往路で超高速化が進むと予想されている。そうなれば、最初に流れに乗り遅れるとレースが終わってしまう。そのため1区は従来の「遅れなければいい」から「ここで差がついたらダメ」という重要区間になり、エース級のランナーが投入されることになる。

 両角監督もその流れを読み、1区から攻めの姿勢で勝負をかけていく。

「今回は1区が非常に重要です。うちはジュダで行く予定ですが、ロケットスタートを切れるかどうか。流れを掴み、シードを狙える位置でレースをするために、頭から主力を投入して勝負したいと思っています」

 全日本大学駅伝では1区で17位と出遅れたが、箱根駅伝でその順位は致命傷になる。先頭集団に食らいついていい流れを作れれば、2区以降の選手も波に乗れるだろう。

 果たして、「湘南の暴れん坊」の復活なるか──。

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