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ボクシングPRESSBACK NUMBER
事前予想は「那須川天心の判定勝利」だったが…元世界王者・飯田覚士が驚いた井上拓真の対応力「こう来たかと思って…背中がゾクゾクってしました」
posted2025/11/29 11:02
WBC世界バンタム級王座をかけた井上拓真と那須川天心の大注目の一戦。元世界王者の飯田覚士氏はこの試合の勝負の分かれ目をどう見たのか
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
那須川天心の立ち上がりに“小さな驚き”
どっちが勝つか、予想が真っ二つに割れるカードほど盛り上がる。両者に知名度があればなおさらだ。
11月24日、トヨタアリーナ東京で行なわれたWBC世界バンタム級王座決定戦。“キックの神童”と呼ばれ、プロボクシング転向からわずか8戦目で世界挑戦チケットを手にした1位・那須川天心(帝拳)と、元世界王者であり、スーパーバンタム級4団体統一王者のスーパースター、井上尚弥を兄に持つ2位・井上拓真(大橋)による大注目の一戦。WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏の事前予想は「那須川の判定勝利」であった。那須川の伸びしろ、井上の経験値といった目に見えないものを判断材料とせず、目に見える「12センチのリーチ差」「(長いリーチを活かした)懐の深い構え」「スピード」は、フラットな視点に立ったうえで天心有利予想に傾いた。しかしそれはあくまで事前予想に過ぎず、いずれが勝つにしても、人々の想像を超える戦いになってほしいという願いがあった。この2人の「セッション」なら、そうなるんじゃないかという期待があった。まさにそんな戦いが待っていたのだ。
1ラウンド、まず那須川の立ち上がりに飯田は「オッ」と小さな驚きの声をあげる。
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「アマゾンプライムの事前番組をチェックしたときに天心選手が『キックの動きをもう1回取り入れる』みたいな話をしていて“なるほど、これか”と思いましたね。ボクシングのキャリアを重ねるにつれて腰の位置を低くして、腰のすわりが良くなっていたのですが、今回は逆に高くして、(両足の)スタンスも狭くしてきた。そのまま蹴りが出てもおかしくないような感じでしたね。拓真選手の動きに即座に反応するためなのかなとは思いました。これがドンピシャでハマっていて、右ジャブも非常にシャープ。ゆったりとした構えから、急に速く動く緩急もいい。一方で拓真選手の動きはメチャメチャ硬い。まずは『見る』というところだったんでしょうけど、1ラウンドの最後にパンチをもらってしまうなど天心選手のペースになっていきそうな雰囲気がありました」
こう来たかと思って「背中がゾクゾクした」
1ラウンド残り10秒を切ったところで、那須川は踏み込んでの左オーバーハンドを顔面にクリーンヒットさせる。さらに2ラウンド1分過ぎ、右ジャブを突いてそのまま距離を詰めていき、左アッパーから右フックを見舞う。スピードを活かして自分はパンチを当てて、相手からは届かない距離にステップを踏む。1、2ラウンドはジャッジ3者ともに那須川を支持。状況を打破しなければならない井上陣営が、早速3ラウンドから動くことになる。


