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野球善哉BACK NUMBER
ミスターレオ・栗山巧が「最後の1年」を戦うわけ…“イチローと同じ境遇”に見た衰えぬ探究心「ファームでの学びの答えを見つける1年に」
text by

氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/11/28 17:01
ラストイヤーに何を見せてくれるのか。栗山巧が野球を探求する生き方の最終章がはじまる
思い出したイチローさんの言葉
そんな栗山の姿勢を見たとき、あるスーパースターの言葉を思い出した。それは2019年に全世界の野球人から惜しまれながら引退したイチローさんだ。
イチローさんは引退する前年のシーズン、マリナーズと1年契約を結んでいたが、その年の5月にメジャー枠から外れた。普通ならそこで引退を決意してもおかしくない。だが、翌年に日本での開幕シリーズがあること、シーズン前のキャンプではチャンスが与えられることを知ったイチローさんは、残りのシーズンをチームに同行しながら練習を続けたのだった。
(契約上)試合には絶対に出られないとわかっていた中で、チームメイトとともにシーズンを完走。先の見えない中での孤独な時間は、イチローさんにとって貴重な経験だった。
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事実、引退セレモニーの後の記者会見で、イチローさんはこの期間のことを「誇れることの一つ」として、こう振り返っている。
「去年(2018年)の5月以降、試合に出られない状況になって、その後もチームと一緒に練習を続けてきたわけですけど、それを最後まで成し遂げなければ、今日のこの日はなかったと思うんですよね。
今まで(メジャーリーグで)残してきた記録はいずれ誰かが抜いていくと思うんですけど、5月からシーズン最後までのあの日々は、ひょっとしたら誰にもできないことかもしれないというふうな、ささやかな誇りを生んだ日々でもあったんですね。だから、そのことがどの記録よりも自分の中ではほんの少し誇りを持てたことかな」
イチローさんと同じ境遇だった栗山
5月を最後に一軍出場がなかったという意味においては、栗山も同じ境遇だった。舞台の違いはあれど、先の見えない中での戦いという、精神性が試される環境で栗山も同じような壁に立ち向かい、それに打ち克ってきた。
ファームでの日々を栗山はこう振り返っている。

