ドジャース佐々木朗希の「不調・故障→復活」はなぜ起きた？ 改めて半年間の変化を“フォーム解析”第一人者が見る「カギは足の高さ、胸番号、お尻」 

胸番号でわかる変化

「これまでに説明した、下半身で作られたエネルギーが投球方向へ行くようになったら、今度はそこから横の回転に移る。先に腰が回転した後、肩を回転させることで捻転差が生じる。そのズレによって下半身で作られた力が上半身に伝わり、力のあるボール、体重の乗ったボールがいくわけです。

　これが、軸足でしっかり地面を押せていないと、どうしても体重移動が速くなり、腰と肩が一緒に回ってしまう。よく言う“開きが速い”という状態ですね。

　佐々木くんも、4月は腰が回るのと同時にユニフォームの胸番号の11がホーム方向を向いていた。しかし、10月は腰がホーム方向へ回っても、胸番号11はまだ三塁方向に向いている。4月は左足を高く上げられず、軸足で地面を押す力が弱かったのに対して、10月はしっかり地面を押せるようになっているからです」

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　ボールにしっかり体重が乗っているかどうかは、投げ終わった時の尻の動きにも現れるそうだ。

「うまく体重がボールに乗っていないと、リリースする際にボールをたたきつけることができなくて、上に抜けてしまう。投手はそこで、お尻を後ろに引き、上体を前に出すような動きをします。投球のフィニッシュの局面でそういう動きをして、体重を乗せられなかったぶんを補おうとするんですよ。いわゆる代償運動です。

　佐々木くんも4月と10月を見比べると、4月はお尻が後ろに出ている。10月はそのお尻の動きが修正されて、前の股関節にしっかり体重を乗せた状態でリリースしているから、力が逃げない。これも投球フォームの良し悪しを判断する上で重要なポイントですね」

天性のタイミング

　そして、ボールから手を離すリリースの瞬間、佐々木が力を伝えているのは指だ。これは天性のものだと、川村教授は強調する。

「私は、高校時代から間近に佐々木くんの投球を見てきましたが、何がすごいかと言うと、指からの（力の）伝え方がものすごく上手なんですよね。これは本当にいい投手の一番の条件だと思う。

　並の投手が同じところで投げたら、間違いなく上に抜けてしまうようなリリースポイントから、バーン！　と下に向かって投げる。その指先から離すタイミングが絶妙なんですよ。これは他の人には真似できません」

　では、佐々木はメジャーから離脱していた4カ月の間、どのようにして苦境を克服し、本来のフォームを取り戻したのだろうか。

〈全2回の1回目／2回目につづく〉

#2に続く

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