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「ひとりでできることには限界がある」高梨沙羅29歳が痛感した“道具との向き合い方”「自分の周りに膜みたいなものが…それを破れた時が変われる瞬間」
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAsami Enomoto
posted2025/12/01 17:01
29歳にして、ジャンプの第一人者としてミラノ・コルティナ五輪に挑む高梨沙羅
「自分の周りに膜みたいなものがある感じ」
「なんだか自分の周りに膜みたいなものがある感じなんです。それを破れた時が変われる瞬間だと思うので、少しのチャンスも見逃さないようにしたい。だから今は自分が成長できるものは何でも取り入れていきたい。用具、セッティング、技術の見直し、他人の技術を見て勉強させてもらったり、いろんなことに挑戦していますね」
小林陵侑や中村直幹といった男子選手と練習をともにし、新しいコーチにも師事した。この夏からは女子代表の体制が刷新されたため、新ヘッドコーチの金城芳樹らの知見も取り入れている。シミュレーションと呼ばれる陸上での動作確認練習でも、より実戦的な方法を試行中。代表チームではそのシミュレーションを全員揃ってやる時間が設けられるようになり、まるで団体競技のような雰囲気も味わっている。
「なんだか新鮮です(笑)。おかげで選手同士の交流の場も持ちやすくなりました」
五輪シーズンの新たな取り組み
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五輪シーズンに向け、硬さや形状の異なる数種類の板のテストに取り組んだのもその一環。昨季から判定が厳しくなったテレマーク姿勢について、小林が「沙羅が使っている板はめっちゃ硬いから(テレマークが入れにくい)」と話していたが、そうした助言も踏まえての判断だろう。長くサポートを受けているスラットナー社以外の板も試し、従来より柔らかめの板にすると、実際に着地時のテレマークは入れやすくなったという。W杯開幕までにスラットナー社に決めたものの、台のサイズや風向きによっても適性があり、シーズン中も模索し続けていくことになる。
これまではそうした用具の選別にあまり積極的ではなく、「私は技術を求めてやっているから」と道具よりもまず真っ先に自分自身に原因を求めるのが高梨のスタンスだった。
しかし、コーチ陣や技術者からもテストすることの有用性を説かれ、突き抜けるためのプラスアルファを探していた高梨もその勧めに応じた。結果として、自分のジャンプの組み立てに、これまでとは違った手応えも感じられている。
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