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「手応えはあります」クイーンズ駅伝連覇を狙う日本郵政グループ女子陸上部メンバーが語る、“勝利を呼ぶチームワーク”《新たなレガシーの構築へ》

posted2025/11/20 11:00

 
「手応えはあります」クイーンズ駅伝連覇を狙う日本郵政グループ女子陸上部メンバーが語る、“勝利を呼ぶチームワーク”《新たなレガシーの構築へ》<Number Web> photograph by Tadashi Hosoda

チームワークの良さを誇る、昨年のクイーンズ駅伝優勝メンバーと髙橋昌彦監督

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和田悟志

和田悟志Satoshi Wada

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Tadashi Hosoda

 昨年、創部10周年を迎えた日本郵政グループ女子陸上部は、全日本実業団女子駅伝(クイーンズ駅伝)で4年ぶり4度目の優勝を果たした。 「POSTIES (ポスティーズ)」主要メンバーと監督が、節目の年に勝利を手にした要因と連覇に向けた新たな意気込みを語る。

 日本郵政グループ女子陸上部(愛称・POSTIES)は、2014年4月創部と歴史は浅いものの、日本の陸上界において確かな存在感を示してきた。

「個人種目で活躍できる選手を育てることがチームの大きな柱です。また、若手の育成や全体のレベルを上げる意味でも、駅伝は非常に大事なツールだと考えています」

 髙橋昌彦監督は、〈個〉と〈チーム〉の強化を両輪に掲げて、創部時よりこのチームを率いてきた。これまで鈴木亜由子や廣中璃梨佳ら日本代表として世界大会で活躍する選手を輩出。一方、全日本実業団対抗女子駅伝競走大会(クイーンズ駅伝) では、'15年の初出場から創部10周年を迎えた'24年までの10年間で実に4回もの優勝を誇る。

「いろんな〈縁〉と〈運〉が重なって4回も勝てたんだと思います。もちろん実力もあったと思いますが」

 髙橋監督が〈運〉という言葉を用いたのは謙遜にも聞こえるが、相応の理由がある。

「4回の優勝のうち、 “勝てるな”と思って勝てたのは1回きりなんです」

 意外にも思えるこんな胸の内を明かした。

「初優勝した時は“本当に勝てたの?”という感じでしたし、'19年の2回目の時も、日本代表の2人を外して廣中や菅田 (雅香)を含む新人4人を起用しての優勝でした。“勝てるな”と思って臨んだのはその翌年の'20年だけです」

勝てないはずの“数字”と勝てる“予感”

 昨年のクイーンズ駅伝も、前評判では連覇を狙う積水化学が優勢と言われていた。

「いつもレース前に区間ごとのタイムを計算してみるんですけど、計算上はどうやっても積水化学さんに勝てなかったんです」

 それでも「ベストの調整ができた」という自負だけはあった。髙橋監督はレース前日、選手たちを鼓舞するように「明日はワンチャンスあるから」と送り出した。

 キャプテンの菅田にも予感はあった。

「根拠のない自信というか、駅伝前の合宿の時に、璃梨佳と『なんか勝ちそうよね』みたいな話をしたことがあったんです」

 そして、その予感は現実のものになる。

 序盤は積水化学に先行を許したものの、1区の菅田が区間3位と好スタートを切ると、2区の牛佳慧も区間2位と奮闘し、2位で3区の廣中につないだ。

「良い流れで来てくれたので、レースに身を任せて、前をめがけて走りました」

 この駅伝が昨季の初レースだった廣中は区間2位と好走し、積水化学から初めてリードを奪った。そして、4区のカリバ・カロラインでついにトップに立った。

「区間賞は取れなかったが、先頭で亜由子さんに襷を渡せたことは良かった」

 そんなルーキーの快走に5区の鈴木も「踏ん張るしかない」と奮起。接戦の末、中継所では1秒先着し、先頭でアンカーの太田琴菜に襷をつないだ。

「亜由子さんが見えた時に“自分の持っている力を全て出すしかない”って自然と覚悟が決まりました」

 手に汗握る展開に、10カ月ぶりのレースに臨む太田は腹を決めていた。

 実は髙橋監督が最後まで頭を悩ませたのがこの6区だった。駅伝前の徳之島合宿では和田有菜の調子が良かった。一方、ケガに苦しんできた太田は合宿後半から調子を上げ、最後のタイムトライアルで好走した。

「和田は少し調子を落としていたので、調子を上げてきた太田の起用を決めました」

 その判断が的中。太田は起用に応えて残り1kmを前にライバルを突き放し、歓喜に包まれながらフィニッシュテープを切った。さらにチーム唯一の区間賞を獲得する走りで大会MVPにも選ばれた。

最強のチームワーク

 選手たちがもう一つの勝因に挙げたのが〈チームワーク〉だ。「本当にチームワークがすごい。他のチームと比べても最強だと勝手に思っています」

 廣中はきっぱりとこう言い切る。

「気がついたら頼もしい後輩たちがいて、彼女たちに支えられて、ここまで来た。良いチームができ上がったなって感じました」

 初期メンバーの鈴木もこう言葉を続けた。そんな彼女たちの言葉を聞いて、髙橋監督も誇らしげだ。

「うち以上に走力を備えているところは他にもあったと思うんです。でも、去年のチームを見ていて、我々のチームワークが一番だと感じました」

 また、選手たちには'20年の優勝とは違った感慨もあった。

「全国に郵便局があり、すごい応援団がたくさんいらっしゃる。去年の優勝を皆さんと分かち合えたのがよかったです」

 コロナ禍だった5年前は無観客開催だったが、菅田が言うように、昨年はグループを挙げての応援が彼女たちを後押しした。

「普段一緒に仕事をしている方々が応援してくださり、モチベーションになっています。店長も試合に応援に来てくれます」

 こんな言葉を口にしたのは牛だ。競技に打ち込むかたわら業務に就く彼女たちにとって、全国の同僚の応援は大きな力となる。

 連覇がかかる今年の目標はもちろん優勝だ。ただ、 「そんなに気負わずにチャレンジする」ことを菅田は掲げている。髙橋監督も気負うことなく連覇を窺う。

「“このチームが好き”ってみんなが思えるような取り組みをやっていけば、自ずと良い結果がついてくると思う。そういう意味では手応えがあります」

 自然体で挑み、全力を出すことができた時、5回目の歓喜が訪れるだろう。

上の画像をクリックすると、選手の素顔も見られる「POSTIES」の公式インスタグラムにジャンプします上の画像をクリックすると、選手の素顔も見られる「POSTIES」の公式インスタグラムにジャンプします

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