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リングでの大量出血にレフェリーが「バケツ3杯までなら大丈夫」…デビュー40周年の“暴走女王”が振り返る「本当にあった」衝撃の全女伝説
text by

“Show”大谷泰顕“Show”Yasuyuki Ohtani
photograph byShiro Miyake
posted2025/11/08 11:00
今年でデビュー40周年を迎えた堀田祐美子。全盛期の全女をはじめ女子プロレス界を生き抜いてきたレジェンドの記憶に残るエピソードとは?
すると、その後輩がおもむろにドライバーをフルスイングしたのだ。すると次の瞬間、堀田の左頬にそのゴルフクラブがぶち当たった。
「誰かの悲鳴が聞こえたことこそ記憶に残っているものの、そのまま意識をなくした私は、その場にバタッと倒れたみたいです。次に私が見たのは、先輩たちがのぞきこむ顔で」
「大丈夫! 意識が戻った」
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堀田が目を開くと、その様子をうかがっていた先輩方がそんな声を漏らした。
「倒れた後、そのまま事務所があるビルの上の階にあった道場に運ばれて寝かされていたみたいで」
堀田が自分の倒れた際の状況を聞くと、左頬にゴルフクラブが直撃し、そこにボコッと穴が開いたのだという。
「もの凄い量の血が出たから、『ワセリンで血止めをしといた』と言われて。今も私の左頬は陥没しているんですけど、自然治癒のおかげでエクボのように見えるようになっていて。チャームポイントになったのが不幸中の幸いだったかな」
そう堀田は苦笑するが、意識が戻った後に念のために近くの病院に行くと、医者から驚きの言葉を告げられる。
「もし目に当たっていたら失明していただろうし、頭だったらあの世に行っていたかもしれない。ラッキーだったね」
ただ、そんな言葉以上に驚かされるのは、その後のスケジュールである。
事故で大出血の夜に…まさかのタイトルマッチ
実はその病院には北斗晶と名乗る前の同期の宇野久子も同行していたのだが、堀田の診察後、2人は急いで大田区体育館(現大田区総合体育館)に向かった。
なぜならその夜、堀田と北斗の2人で、レイラニ・カイ、ジュディ・マーチンの持つ、WWWA世界タッグ王座に挑戦することが決まっていたからだ。
「事故で死んでいたかもしれない……みたいな話をされた直後に、そのままタイトルマッチに向かうって、いまなら考えられないですよね。我ながらプロレスラーは“超人”だなと思う。でも、こっちはまだデビューしてから2年目の若手だし、勢い以外は何も持っていないから」

