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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本シリーズ“阪神の誤算”「デュプランティエを起用した狙いは?」藤川球児「ご想像にお任せします」岡田彰布は疑問視「そら事情はあるやろうけど…」
text by

内匠宏幸Hiroyuki Takumi
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/11/05 17:08
就任1年目での日本一を逃した阪神の藤川球児監督。ソフトバンクを勢いづかせた“誤算”とは何だったのか
直前から藤川を覆う空気感は完全に変化していた。試合前の練習中、ベンチに座り、番記者と談笑するのがルーティンだったのに、クライマックスシリーズ(CS)からはベンチに寄り付くことがなくなった。グラウンドの中央に立ち、時にライトフェンスに背を預け、そして打撃ケージの後ろに立つ。「メンタルは切り替わっていた。常にピリピリした感じだった」。番記者からこう聞いた。
CSから日本シリーズを「別物」として、楽しんで臨むといった雰囲気を出していたのに、それが消えていた。目の前にある日本一の座。監督就任1年目でいきなりそこに手が届けば……。そんな野心が芽生えてもおかしくない。
岡田彰布の疑問「そら事情はあるやろうけど…」
第1戦、エース村上頌樹の好投と少ないチャンスを生かして1点差勝ち。これこそがタイガースの野球。いきなり流れを作った。誰もがそう感じた。
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そしてポイントになる2戦目がやってきた。監督として、大きな賭けに出た。起用法が正解だった時は「何も言われないところなんで」と後に語っているように、不正解の危険性があることも心に刻んでいたのだろう。非常にリスキーな状況ではあるものの、もしうまく運べば称賛される采配……。まさに紙一重にかけた「藤川マジック」はものの見事に打ち砕かれた。
8月以前のスピードはなく、コントロールもばらつき、ソフトバンク打線の餌食に。早々に7失点。1勝1敗になる“ただの負け”ではなかった。短期決戦の流れは完全に逆流した。周東にシリーズ新記録になる1試合5安打を食らい、目覚めさせてはならない山川を呼び覚ましてしまった。
評論家のほとんどがこの戦術に「?」をつけた。現場でゲームを見届けたオーナー付顧問の岡田彰布は球団での立場を離れ、あえて球界OB、前監督として疑問を隠さなかった。
「2カ月以上、実戦で投げていない不安感。そらオレらにはわからぬ事情、背景はあるやろうけど、2戦目に先発させる投手がいなかったわけではないはず。この1年、頑張ってきたピッチャーを出すべきところやなかったか。日本シリーズとはそんな舞台やと思うけどな」
結果的に第2戦を境に、阪神はソフトバンクの勢いに飲まれていく。そして1勝3敗で迎えた第5戦、もうひとつのターニングポイントがやってきた。
<続く>


