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藤川球児監督の“気になる発言”「阪神タイガースファンは日本で最も熱い」その真意…“ファンは戦力”と言い切る男、なぜ新しい監督像なのか?
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岡野誠Makoto Okano
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/11/06 06:01
阪神を率いる藤川球児監督、45歳
■5月28日 阪神 1―0 DeNA(甲子園) ※近本光司のタイムリー直前の場面について
-五回1死一塁の代打・島田は何とかゴロを打とうという姿勢が見えた。
「右バッターはどうしても苦しいと言いますかね、かなり食い込んでくるボールを投げてますから。島田のバットの軌道には合うんじゃないかと。ああいう進塁は甲子園でファンの方の声援をいただけるので、本当に球場が一体になって取った1点だなと思います」
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単にヒットを打つ、打たないではなく、進塁打に拍手を送る場面をピックアップしている。裏を返せば、このコメントを発することで、ファンの野球眼をさらに上げようという啓蒙の目的もあるのかもしれない。その意図は、他の発言からも読み取れる。
■8月30日 阪神 3―2 巨人(甲子園) ※高寺望夢がバント失敗で一塁へ走らず
-明日へ向けて。
「タイガースファンの方の温かい声援と熱い声援と、それから選手に叱咤(しった)できるような声援もぜひほしいなと思いますね。チームとして進む方向は一つなんですけど、まだまだひよっ子な選手たちがいますから」
「なぜ?」練習中、選手に拍手
温かい声援だけでなく、厳しい指摘も望む。それが選手の成長につながると、現役時代から感じていたのだろう。これらの言葉が「ファンも戦力」という発言の信憑性を増しているのだ。そして、こんな一言も説得力を持たせる要因となっている。
■10月18日 日本シリーズ進出決定翌日 ※全体練習
-デュプランティエが投げている時に拍手していたのは姿勢が良かったのか。
「オープンマインドですね、彼も感謝していましたけど、どうしても見守ってるだけになってしまうので」
練習中、藤川監督は観客のように拍手をして、選手を鼓舞した。声援の効力を熟知しているからこそ、自らも実践しているのだ。このような背景があるため、ファンには甲子園での優勝インタビューでの言葉が刺さった。
「阪神タイガースファンというのは今最も、日本で熱いファン。タイガースの伝統を引き継いで、つなげていただいて、世界に誇れる阪神タイガースにしていきましょう!」
1年を通して、藤川監督はファンに感謝を表し続け、時に啓蒙してきた。ファンの応援が勝利を後押しすることを知悉しているからだろう。その姿は、阪神に限らずプロ野球界にとって、新しい監督像といえるのかもしれない。
一方で、日本シリーズで敗れたため、ファンから疑問の声も噴出し始めている。なぜ、デュプランティエを第2戦で先発させたのか――。
〈つづく〉


