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「なぜそれを落語でやるの?」が出発点…“偏差値70超の進学校→国立大の数学科入学”異端の落語家が「落語界のM-1」で勝つ“最強のネタ”を作るまで
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生島淳Jun Ikushima
photograph byAtsushi Hashimoto
posted2025/11/06 11:04
京都の進学校→国立大の数学科という異色の経歴を持つ落語家の立川吉笑。NHK新人落語大賞という大舞台で、勝負ネタに選んだのは?
実は吉笑はネタが生まれた2021年も、この「ぷるぷる」でNHK新人落語大賞の一次予選に挑んでいた。
「当時はコロナ禍ということもあって、一次が映像審査だったんです。何度か高座にかけたところ、明らかにこれまでのネタとは段違いの反応が得られていたので自信はありました。でも、無観客で撮影した映像だと、ただの出オチの悪ふざけのように見えたのか、通りませんでした」
ただ、そのおかげで1年間「ぷるぷる」を叩く時間を取ることができた。
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ネタを熟成させる時間が取れ、しかも翌2022年の一次予選はまた対面審査に戻るという幸運もあった。
ネタの構成は…「後半に向けて盛り上がるように」
ネタを作るにあたっては笑いの量が「後半に向けて盛り上がっていく」ように構成を練っていったという。
「『ぷるぷる』は前半、中盤、後半にめっちゃ強いパンチが3つ入っていて、その部分は100%、ウケるという自信がありました。しかも、一番強いパンチが最後に控えているという理想的な展開なんです。そのネタで一番強いボケでダーンって盛り上がって、さらにボケをかぶせてドーンとウケて、ストーンと終わるから、ワーッとなる。
自分はたまたまお笑いが好きだし、M-1にも大きな影響を受けていた。それもあって、こういう構造のネタが作れたんだと思います。従来の古典落語だとあまり見かけない仕組みです。でも、コンテストに限っていえば、そういう考え方で行った方が勝つ確率は高まる気がします」
M-1同様、話芸のコンクールにおいても、笑いの量は「善」なのだ。
「笑いって、良くも悪くも分かりやすい反応なんです。もちろんスベッた時にはリスクに転化しますが、そのかわりウケた瞬間は、評価が可視化される。ウケ量が圧倒的だと、それは“客観的な事実”になるんです」

