濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
まさかの赤字1600万円に「笑える額じゃない」なぜウナギ・サヤカはそれでも自主興行を続けるのか? 引退する先輩に涙…“強気なだけではない”魅力
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/10/31 17:00
4月の両国国技館自主興行の後も、精力的な活動を続けるウナギ・サヤカ
スターダムを「クビになって」以降、フリーとして突っ走ってきた。でも1人では走れなかった。ウナギとの対戦を終えた本間は言った。
「ウナは夢を叶える力を凄く持っている人。それは1人ではできないことだけど、人を動かす力、人に与える影響力もあるので」
ウナギには本間多恵という先輩レスラーがどんな存在かを聞いてみた。
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「(本間は)深刻なことも軽い感じでやっちゃうんですよ。だからこっちもできる気が勝手にしてくる。ギャン期(フリー)になって、周りは先輩ばっかだし怖い人ばっかだし、でも弱音は吐けないし強気でいくしかない。そういう中で、いつもゆるっとした感じで話しかけてくれて、場を明るくしてくれた。節目節目で支えてくれた人です」
試合前に涙…強気一辺倒ではない魅力
試合前、握手をする時点で目が合ったら涙が出てきた。闘う相手とそうなることもあるのがプロレスだ。「対戦相手は敵じゃないのか」という声もあるだろうが、プロレスの試合は憎い敵とだけするものではない。リングにはあらゆる感情があり、ウナギはそのすべてを肯定する。
強気一辺倒、自分のために闘っているように見えてそうではないのがウナギ・サヤカというレスラーだ。
「レスラーもファンも関係者も、プロレス界全員を幸せにする」
いつも言っていること、その思いがどれだけ深いかが自主興行の連続開催で伝わってきた。もちろん通常の試合も忙しい。この秋はシードリング、ディアナ、OZと各団体のビッグマッチにも出場している。
実は右足の甲に負傷を抱えながらの連戦だった。休んだほうがいいのではないかと言われると、ウナギはこう返した。
「折れてるけど歩けないわけじゃないんで。こんなもんじゃ欠場してらんないですよ。休む気ないですし。これが縄文時代(おそらく原始時代のこと)で、マンモスを狩りに行かなかったら死ぬとなったら行くでしょ。それと同じ」
いやもちろん、休める時は休んだほうがいい。無理は禁物だ。ただアーティスティック・スイミングでオリンピック候補として期待されたこともあるウナギは、基本的にこういう“根性型”マインドの持ち主なのだということは伝えておきたいのである。



