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まさかの赤字1600万円に「笑える額じゃない」なぜウナギ・サヤカはそれでも自主興行を続けるのか? 引退する先輩に涙…“強気なだけではない”魅力
posted2025/10/31 17:00
4月の両国国技館自主興行の後も、精力的な活動を続けるウナギ・サヤカ
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
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Norihiro Hashimoto
「笑える額じゃない」
自身のYouTubeチャンネルで、ウナギ・サヤカは言った。
フリーのプロレスラーであるウナギは昨年から自主興行を開催。後楽園ホールでの成功を経て、今年4月26日に両国国技館大会を行った。選手個人の自主興行としては破格の大会場だ。
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だがこの大会は観客動員が伸びず、結果としてウナギは1600万円もの赤字を抱えることに。フリーとしてはかなり厳しい、まさに笑えない額だ。
大会直前には、大量の在庫チケットが発見されたという。関係者の不手際で販売されなかったものだ。その数1000枚。チケット情報で「完売」となっていた席種の中にも、実はまだ売られていないものがあった。
さらに8月からの7カ月連続自主興行では、会場予約の不備が判明、当初の発表から日程変更せざるをえない月が出てしまった。両国大会が終わってから離れたスタッフもいて、内部は相当な混乱があったと思われる。
それでも「やってよかった」と語った理由
2月の後楽園ホールでは“女子プロレス界の横綱”里村明衣子とワンマッチ(1試合のみ)興行をやってみたり、とにかくやりたいことを全部実現させてきた。両国でも豪華なセットを組んでいる。予算は度外視。お金をかけた分、チケットやグッズを売ればいいんだと突っ走ってきた。突っ走ってきたからこその、両国での挫折だった。
それでもウナギは、両国大会を「やってよかった」と言う。
「両国国技館のリングに上がるのが夢だったという選手もいるので。人の夢を叶えてあげられるなんて、そうそうないこと」
それに、ここでやめてしまったら“負けて終わり”だ。続けるからこそ勝てる日がくるし、赤字も返済できるというもの。目標にしてきた東京ドームでの自主興行もあきらめてはいない。
8月は東京ドームシティアトラクションズの芝生広場で屋外大会を開催。鈴木みのるとの試合中に絶叫マシーンに乗るなど、ここでもやりたいことをやり通した。9月からは5大会連続で、引退直前の選手を見送るシングルマッチを組んでいる。
9月が本間多恵、10月が加藤園子、11月は宮崎有妃、さらに優宇、世羅りさと続く。
「奇跡的なマッチメイクなんですよ。1人でもできない選手がいたら、別の企画にするつもりで」

