濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
まさかの赤字1600万円に「笑える額じゃない」なぜウナギ・サヤカはそれでも自主興行を続けるのか? 引退する先輩に涙…“強気なだけではない”魅力
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/10/31 17:00
4月の両国国技館自主興行の後も、精力的な活動を続けるウナギ・サヤカ
ウナギが仕掛けた“心のこもった演出”
大事な先輩レスラーが5人も引退する。その全員と最後に闘いたい。誰か1人でも欠けたら「気持ち悪いじゃないですか」とウナギ。
単に試合をするだけではない。野球好きの本間のために大会オープニングで「始球式」を行ったり、加藤との試合後には卒業式の定番曲「旅立ちの日に」を出場選手みんなで合唱した。すべて1大会のため、その選手のために準備を重ねてきたことだ。
花束贈呈は選手や関係者からではなくファンから。引退するレスラーが場内を一周し、リングサイド(カウンター席)の観客からイメージカラーの花を一輪ずつ受け取っていく。細やかな、心のこもった演出だ。
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ウナギvs加藤の試合では、デビューした団体GAEA JAPANでの加藤の同期である永島千佳世が乱入する場面もあった。試合当日になって永島から連絡があったらしい。本間との試合でも、ゆかりの選手たちがサプライズゲストで来場していた。
こういう密度の濃い、通常のルーティンとは違う興行を5カ月連続で開催するには相当なエネルギーが必要なはずだ。「次はどんなことをやるんだろう」と、見る側のハードルも高くなる。
だがそれもウナギにとっては普通だし、楽しいことだという
「5カ月連続とか、そういうふうに捉えたらキツいかもしれない。でも“この人のために”と考えるのは楽しいでしょ」
先輩レスラーの証言「ウナは夢を叶える力を持ってる」
本間多恵は、加藤園子は何が好きなんだろう、どんなことをしたら喜んでもらえるだろう。そう考えていると気持ちもアイディアも途切れないのだそうだ。
本間はフリー。引退前に自身でも自主興行を開催したが、それはウナギの強いすすめによるものだった。フリーだからこそ“主役”になる場が必要だとウナギは考えている。
「プロレス団体の興行だと、最終的に主役になるのは所属選手。でもフリーがメインディッシュになる舞台もあっていい」
ウナギの自主興行では、紙テープは引退選手のみOKとなっている。自分に対してもやめてほしいというのがウナギの希望。リングに投げ込む紙テープは安全のために芯を抜き、巻き直す手間がかかる。その手間を自分ではなく、対戦相手に使ってほしいというわけだ。



