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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「こんな順位で…」193センチ大型右腕“ビックリ指名”のウラで聞こえた残酷な悲鳴「目玉は立石正広」創価大ドラフト密着中にじつは起きていた“指名漏れ”
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/10/28 11:03
10月23日、阪神とヤクルトからそれぞれドラフト指名を受けた立石正広と山崎太陽
「本当にきた!」「うおおおお!」
その瞬間は唐突に訪れた。18時15分。創価大にふたたび歓喜の声が響きわたる。
「第3巡選択希望選手、東京ヤクルト。山崎太陽」
記者席の真後ろに座っていた野球部員たちが総立ちになり、いっせいにカメラのフラッシュが焚かれる。立石の1位指名時にも劣らないほどの盛り上がりだ。「マジか!」「本当にきた!」「うおおおお!」など反応はさまざまだが、もっとも目を引いたのは、指名された当人のリアクションだった。「ウソだろ……」とばかりに大きな手を頬にあてて、仲間たちと抱き合う。隣にいた大島とも、ガッチリと握手をかわした。
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「本当にビックリしてます。呼ばれると思ってなかったので、ボーッとしてたら……。自分のなかでは『下位か、もしくは育成で』と思っていたので。まさかこんな順位で呼ばれるとは」
会見でのコメントは謙遜ではなく本音だろう。指名直後の山崎は「鳩が豆鉄砲を食らったような」という慣用句がぴったり当てはまるほど、完全に不意打ちを食らった顔をしていた。
直後の囲み取材で、山崎が隣に座っていた大島との会話の一端を明かしてくれた。
「指名前に『山崎あるぞ』って言われてたんですけど、本当に呼ばれるとは思ってなかったんで。なんとか、大島も選ばれてほしいです」
険しくなっていく表情、会見場で漏れたため息
18時30分、5巡目の指名が始まる。「大島正樹」の名前は呼ばれない。次第に本人の表情が険しくなる。ほんの十数分前までの熱狂が嘘のように、野球部員たちも静まり返っていた。ひとつひとつの指名を、固唾をのんで見守っている。
6巡目、DeNAの選択終了を皮切りに、日本ハム、阪神、ソフトバンクが支配下選手の選択を終える。創価大では「選択終了」のアナウンスのたびに「あぁ……」とため息が漏れる。指名に備えて、壇上には会見用の椅子とテーブルがセットされたままだ。一方で、立石の1位指名時は多くの学生で埋まっていたホールの後方は空席が目立つようになっていた。
巨人と中日、西武が6人で選択終了し、7巡目の指名が終わった。そして7位まで指名したヤクルト、ロッテ、広島、楽天も8巡目で選択終了となる。指名を残すのはオリックスのみ。19時3分。わずかな希望を託した視線が会場前方のスクリーンに集中する。「選択終了」。この瞬間、大島の支配下での指名は消滅した。
野球部員たちが座るエリアから「うわぁ……」と悲鳴のような声が聞こえる。大島はしばし視線を落として、静かに感情を整理しているように見えた。本人の「支配下以上」という言葉を額面通りに受け取れば、育成でのプロ入りは選択肢にないのだろう。


