- #1
- #2
獅子の遺伝子BACK NUMBER
「佐々木朗希さんとは違う…僕は結果を出してこそ」甲子園1238球“投げ過ぎ論争”の当事者は…西武・山田陽翔「ドラフト5位から新人王候補」の軌跡
text by

市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2025/10/23 11:03
今季リリーフで頭角を表し、飛躍を遂げた西武・山田陽翔
「佐々木朗希さんは…でも、僕は」
「例に挙げていいのかわからないですけど、佐々木朗希さん(ドジャース)は持っているポテンシャルが高いことを誰もが知っていたじゃないですか。確実ではないとしても、プロの世界に行けるというのは、誰もが思っていたし、ほぼほぼ決まっていたからこそ、高校時代に『投げない』という決断ができたのだと思います。でも僕の場合は甲子園で結果を出してこそ初めてスカウトの目に留まると考えていました。それまでは“プロに行けるかどうか”という場所にいましたからね」
自分で自分をアピールする場を作り、自らプロへの道を切り開くなかで、結果的に多くの球数を投げることになった。「自分でプロとの縁を手繰り寄せようという気持ちだった」と明かした。
ドラフト指名直後の「入団してしまえば同じ」という発言を恥ずかしがった山田だったが、実際、1位と5位でチャンスに差はあるのか。
ADVERTISEMENT
「確かに1位であれば、よりチャンスはもらえるのかもしれません。チャンスは、みんなに平等にあるわけじゃないとは感じますけど……。でも、チャンスがあったときは、自分は必ずつかもうと思ってずっと練習していました」
「5位」から飛躍への道
チャンスを必ずつかむ――。その思いを有言実行したのが、まさに今シーズンの山田だった。春の一軍キャンプに抜擢された山田は、その後、オープン戦でも好投を続けた。開幕一軍登録こそ逃したが、2戦目に一軍昇格し、その後は一度も降格することなくシーズンを終えた。最初はビハインドの場面での登板だったが、0点に抑えるたびに評価は上がり、徐々に役割は同点や、リード時での登板に変わっていった。自らの手で首脳陣の信頼を勝ち取ったのである。
その結果、49試合に登板し3勝17ホールド1セーブという成績で、最優秀新人賞の候補にも名前が上がる1年を過ごした。振り返ってみれば22年のドラフトでライオンズから指名を受けたなかで、現在まで最も飛躍した選手だったのではないだろうか。

