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「テストは学年1位、卒業式で総代」11歳でデビューした“大学生レスラー”の今「同じ日に入門したのに…」妃南が語る“3姉妹の比較”本音
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2025/10/18 11:00
10月でデビュー7周年を迎えた女子プロレスラーの妃南
「居心地のよさに甘えてたのかな」
大学にも合格して、あとはプロレスとどう向き合うかが課題だった。
「羽南と吏南は高校時代からプロレスで活躍したけど、自分はできなかった。“その分、妃南は勉強を頑張ってるんだから”って思ってもらえてるかなと、そういうふうに期待していた自分もいましたね」
まだ若いから、学生だから仕方ない。キッズレスラー出身者はそう思われがちだ。まして先輩レスラーやファンの多くは小学生の頃から知っている。どうしたって親のような気持ちになるわけだ。
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「去年までいた(ユニット)Queen's Questも、優しい人ばかりで。AZMさん、(林下)詩美、上谷(沙弥)、レディ(・C)。特に(天咲)光由は友だちみたいな感覚でした。その居心地のよさに甘えてたのかな」
だがQueen's Questは解散となり、妃南はレディ・Cとともに朱里率いるGod's Eyeのメンバーとなる。キックボクシング、MMAでも活躍した朱里だが、そのプロレス観は自由度の高いものだったそうだ。
「基本的にはどんな試合をしても自由で、その中にある“ここだけは変えちゃいけない”というものを教えてくれました。私にとって自分のスタイルを確立しやすいアドバイスがもらえましたね」
漠然と“頑張る”のではなく、指針があるから前に進みやすい。朱里が指導する練習も、それまで経験したことがないものだった。
「6時間くらいやるんですけど、大半は技の練習。ただ最後の筋トレが凄いんです。腹筋は回数とか時間が決まってなくて、朱里さんが終わりと言うまで(笑)」
3姉妹だからこその“悔しさ”も
腹筋の途中で「そろそろ終わりですか?」と横にいた壮麗亜美に聞いたら「まだ序盤です」と返されて驚いたそうだ。新たなユニットで、妃南は“高校生レスラー”からトップを目指すレスラーに変わっていった。「自分は自分」ではなく「羽南も吏南もフューチャーのベルトを巻いたのに、私だけ獲れないで終わるのは嫌だ」と、悔しさに向き合うようにもなった。
立場が人を作るということなのか、ベルトを巻くことで妃南はより成長した。チャンピオンであることの責任を真正面から受け止めた結果だ。技が増えただけでなく、試合ぶりのスケールが大きくなった感がある。
「挑戦を受ける立場なので、自分が引っ張る、タイトルマッチ(に相応しい試合)を成立させるという気持ちが強くなりました」


