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「ダメな所は見せられないな…」“元アクトレス勢”が変えた評価…“戦う女優”青野未来がマリーゴールドで輝く理由「この1年半は、すごく濃い時間」
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原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2025/10/08 17:02
『DREAM STAR GP』優勝を果たしたマリーゴールドの青野未来。10月26日の両国国技館で林下詩美のワールド王座に挑む
“元アクトレス勢”がマリーゴールドで変えた評価
「小川さんを超えたい」と言ってマリーゴールドに入ってきた青野は、また「小川さんを超える」と言った。50年近くこの業界に身を置いてきた小川を超えるのは至難の業だ。でも、それをあえて口にすることで、さらに先へ進めるような気がしているのだろう。
マリーゴールドで試合終了後に行われているサイン会では、いつも青野の所に長い列ができていた。小川は遠くからそれをうなずきながら見ていた。マリーゴールドのスタート時には元スターダム勢、元アクトレス勢と色分けされた認識の中でも、小川は青野をポスターで大きく使用した。青野はそれをうれしく思っていた。
「ケガは一度だけ。2020年9月、肩鎖関節の脱臼で欠場しました。フィジカルもやっていくうちに鍛えられた。今が一番いい。あのすごい奈七永さんを乗り越えられたのは自信になりました。マリーゴールドでは自分を知らない人が圧倒的に多かった。そんな中では最初が大事。評価されちゃうから、下手をこけない。ダメな所は見せられないなって。そういう緊張感がしばらくありました」
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最初の頃は『ここまでやれんだ』などと言われて『ありがとうございます』と応じながらも、悔しい思いをしていた。青野は「自己主張しないタイプ」だ。だが、リングで青野未来を見せることで、その評価は違うものになっていった。
高橋奈七永の引退試合は「今までで一番プレッシャー」
ベルトを失ってから8カ月、また、一筋の強い光が青野を照らした。
「弓月はこのキャリアですごいなあって、本当に。成長の速度が違う。去年でさえすごいと思ったのに。目がすごい。ギラギラしている。戦いの目をしている。勢いに乗っている。DREAM STARの開幕戦で林下詩美に勝った。どうやって勝つか考えてきた、という勝ち方だった。だから、優勝戦もまったく余裕じゃなかったです。早くからプロレスに打ち込めて、センスもあって……。自分は遅く始めたので、うらやましいですね」
最終的に青野は高橋のフィニッシュである必殺のドライバー、ワンセコンドEXで弓月を仕留めた。
「プロレスを始めて8年。高橋奈七永さんの最後の相手を務めることになるなんて。マリーゴールドに来たときは1ミリも思っていなかった。今までで一番プレッシャーがありました。俯瞰で見ると、すごいことだな、と思います」
高橋は引退前、日常生活でしばしば足を引きずって歩いていた。それなのにリング上では「パッション!」を叫び、別人のように動き続けた。
「何なんですかね、あれ。リングに上がると魔法にかかるような」


