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「プロの捕手に、構え方から」!? “素人”YouTuberがなぜ最強ソフトバンクでコーチを?…千賀滉大が「甲斐拓也もアレをやってくれたらなあ」
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熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byHiromu Midorikawa
posted2025/09/20 11:03
いわゆる「野球YouTuber」の緑川大陸(ひろむ)さんはなぜソフトバンクでキャッチングを教えることになったのか? その紆余曲折を聞いた(写真:本人提供)
「こんなキャッチャーおたくの話を聞いていただき、ほんとうにありがとうございます。実はぼく、今日のことがいつも夢に出てきて、的山(哲也)コーチ(当時一軍、現四軍バッテリーコーチ)に突っ込まれて失敗する夢ばかりみていたんです」
ミーティングルームは大爆笑に包まれ、すっかり打ち解けてしまった。
心配する甲斐から電話が
発表会の余勢を駆って臨んだ翌日の実技講習は、充実した時間となった。
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「キャッチャーが7人くらいいて、コーチ、そして大勢の報道陣もいる中で2時間も与えていただきました。で、最初に円になって構え方を教えました。プロ野球選手に構え方、ですよ。でもみんな真剣に取り組んでくれて、ぼくも顔を真っ赤にしてやっているうちに、気がついたら2時間経っていました」
大仕事を終えてひと息ついた緑川さんのもとに、甲斐から電話がかかってきた。秋季キャンプは若手主体。教え子は、自らが不在だった発表会の首尾を案じていたのだ。これが失敗に終わっていたら、フレーミングは従来と変わらず甲斐個人の取り組みのままだっただろう。だが、それは杞憂に終わり、フレーミングはホークス全体が取り組む課題となる。以来、緑川さんはスタッフとしてキャンプに参加するようになった。
フレーミングの練習を始めたコーチまで
人生最大の戦いを振り返り、緑川さんはしみじみと言う。
「発表が終わって、それまでフレーミングに否定的だったコーチのみなさんに、もっと聞きたいこと、知りたいことがあるので、これからよろしくお願いしますなんて言われたのは心底うれしかったです。とくに清水(将海)コーチ(当時四軍バッテリーコーチ)には、現役時代にぼくがフレーミングを知っていたら、あと3年はプレーできたのになんて言ってもらえました。清水さんの取り組みはすごくて、マシン相手にひとりでキャッチング練習を始めたんです。自分がやっていないことは、選手に教えられないと言って」
歴戦のプロたちが、愛すべきキャッチャーおたく、緑川大陸の情熱に次々と巻き込まれていく。こうしてフレーミングは、日本球界に根を広げていったのだ。
〈つづく〉

