オリンピックPRESSBACK NUMBER
ゴール直後に痙攣、レース中に嘔吐も…世界陸上35km競歩「意外と涼しいと思ったけど…」衝撃だった“酷暑”の理由は? 明暗分けた「2年越しの暑熱対策」
posted2025/09/13 18:47
世界陸上男子35km競歩で銅メダルを獲得した勝木隼人。序盤から酷暑の悪コンディションの中で積極的にレースを引っ張った
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Kiichi Matsumoto
9月13日に開幕した東京世界陸上。日本勢のメダル第一号となったのが、オープニングを飾った男子35km競歩の勝木隼人(自衛隊体育学校)だった。
男子競歩のロング種目は、日本の“お家芸”ともいえる種目(2019年ドーハ大会までは50km、22年オレゴン大会から35km)。2015年北京大会50km競歩の谷井孝行に始まり、前回の23年ブダペスト大会まで5大会連続で日本勢がメダルを獲得しており、勝木の活躍で6大会連続に伸ばした。
今回、選手たちを苦しめたのが過酷な気象条件だった。
ADVERTISEMENT
9月に入っても暑い日が続き、大会2日前にはスタート時刻が当初の8時から7時30分へと早められたが、男子の完歩率は68%(失格者も含む)で、50人中フィニッシュに辿りついたのは34人に過ぎなかった。
スタート時の天候は曇り。気温は26℃、湿度は77%だった。
気温以上に過酷だった「酷暑」
連日真夏日が続いていただけに、日差しもなく、数字だけを見れば涼しくも思える。しかし、当日の朝まで雨が降っていたこともあって、湿度が高かった。
「アップ時から湿度が高いなというふうに感じていました。測ったところ80%ちょっとありました。気温はまだ上がり切っていなかったんですけど、ちょっと動いただけで汗ばむような気候でした。そういった意味で、氷などを使って深部体温を下げていかなきゃいけないレース展開だったと思います」
競歩ディレクターの谷井氏は、レース後の会見で蒸し暑さについて質問が及ぶと、このように答えていた。
実際、筆者もレース中は沿道で観戦したが、冷房の効いたプレスルームとは打って変わって、観戦ポイントまで歩いて向かうだけで汗だくになりTシャツを着替えたほどだった。
選手たちもそれぞれ暑さ対策はしてきたはずだ。
それでも、想像以上の蒸し暑さは、日本勢にとってアドバンテージになることはなく、平等に各国の選手たちを苦しめた。

