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ゴール直後に痙攣、レース中に嘔吐も…世界陸上35km競歩「意外と涼しいと思ったけど…」衝撃だった“酷暑”の理由は? 明暗分けた「2年越しの暑熱対策」
text by

和田悟志Satoshi Wada
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/09/13 18:47
世界陸上男子35km競歩で銅メダルを獲得した勝木隼人。序盤から酷暑の悪コンディションの中で積極的にレースを引っ張った
「太陽が出ていない分、まだましなのかなとレース前は思ったんですけど、歩き始めると体の中に熱がこもった。給水ポイントでは毎回、水をかぶったりして、なんとか(完歩した)といった感じでした」
女子20位の矢来舞香(千葉興業銀行)は、このように話していた。
何より、優勝候補にも挙がっていた川野将虎(旭化成)のフィニッシュ後の様子が過酷さを物語っていた。終始先頭争いを繰り広げていた川野は、27km過ぎに立ち止まり嘔吐した場面が映された。その後、先頭に立ったものの、30km過ぎに後退。なんとか18位でフィニッシュに辿りついたが、苦しそうな表情で倒れ込み、車椅子に乗せられてトラックを後にした。
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「選手たちはおそらく、最初は『意外と涼しいな』と思っているなか、徐々に暑さを感じてきたんじゃないかなと思っております。ペースダウンしてしまった選手は“徐々に”というより“一気に”落ちてしまう感じでした」
谷井ディレクターは、今回のレースをこう分析していた。
銅メダルの勝木は「涼しいなと思った」
そんな中、勝木だけは全く違う体感だった。
「暑さに関しては、僕は涼しいなと思っていたので……」
こんな突拍子もないことを口にしていた。その真意はこうだ。
「今年は結構異常で関東は曇りすらなくて、晴れの日の練習しかしていなかった。今回は日陰のないコースと聞いていたので、日陰のないところで準備をずっとしてきました。
個人的には最高気温も35℃を超えてほしいし、できれば快晴であってほしいというのが僕の願いだった。それでも、今日ぐらいのタイムで歩き切れる準備はできていました。湿度に関しては、正直準備はできてなかったんですよ。ただ、いつもよりは楽かなと思っていました」

