甲子園の風BACK NUMBER
「広陵とも試合したかったですが」「横浜に負けて光栄」“無念の不戦勝”津田学園…さわやかに甲子園を去る「見ている人にありがとうと」
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間淳Jun Aida
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/18 18:06
初戦の叡明戦で劇的なサヨナラ勝ちを飾った津田学園。広陵戦の不戦勝、王者・横浜との戦いの後に語った、さわやかな言葉とは
「よし、やってやろう」
ベンチからは「ゲッツー崩れでOK」と大きな声が聞こえてくる。初球。狙っていた速球がストライクゾーンにきた。本田は迷わずバットを振る。しかし、横浜のエース織田翔希投手の球威に押され、打球は遊撃手へのゴロ。併殺打となって無得点に終わった。だが、本田は下を向かず、笑顔でベンチへ戻った。
「きょうは試合のテーマとして、ミスがあっても笑おうと監督さんからも話がありました。狙っていたストレートを捉えきれなかった悔しさはありましたが、やるべきことはできたと思います。相手の力が上でした」
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仲間も本田の打撃に納得していた。主将の恵土湊暉は試合後、「本田はストレートに狙いを定めて、思い切りバットを振っていました。ベストを尽くした結果なので仕方ありません」とチームの思いを代弁した。
広陵とも試合をしたかったですが…横浜に負けて光栄
今春のセンバツで優勝した横浜の力は圧倒的だった。低めに丁寧に投球を集める桑山に対して、各打者は強く低い打球を放って出塁する。わずかでも守備で隙を見せれば、次の塁を陥れる。織田の速球は映像で見る以上に伸びがあった。
恵土主将が、その強さを語る。
「打撃の技術が高く、2アウトから1本出す勝負強さもありました。織田投手のストレートは力があって、チェンジアップも精度が高かったです。守備は球際の強さを感じました。センバツで優勝するチームは、さすがでした」
恵土主将は横浜の力を体感する機会を望んでいた。甲子園出場が決まった際、最も対戦したい相手に挙げたのがセンバツ王者の名前だった。広陵との2回戦が不戦勝となったことに驚きやショックを受けながらも、横浜戦に気持ちを切り替えた。
「広陵とも試合をしたかったですが、自分たちには何もできません。みんなで横浜戦に気持ちを向けようと言っていました。試合の期間が空いた影響は感じませんでしたし、自分たちの力を出し切れました。横浜に負けて終わるのは光栄だと思っています」
見ている人に「ありがとう」と言ってもらえる野球を
スマートフォンやテレビからは、広陵の情報が入ってくる。それでも、津田学園の選手たちは雑音を封じて、次の一戦に向けて集中した。横浜戦に準備する時間が増えたと前向きに捉えたという。そして、横浜戦が近づくにつれ、試合ができる喜びと周囲に感謝する気持ちが大きくなった。本田は言う。

