甲子園の風BACK NUMBER
「広陵とも試合したかったですが」「横浜に負けて光栄」“無念の不戦勝”津田学園…さわやかに甲子園を去る「見ている人にありがとうと」
posted2025/08/18 18:06
初戦の叡明戦で劇的なサヨナラ勝ちを飾った津田学園。広陵戦の不戦勝、王者・横浜との戦いの後に語った、さわやかな言葉とは
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間淳Jun Aida
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JIJI PRESS
勝ちとは別の価値を手にした。春夏連覇を狙う横浜に敗れた津田学園の選手たちは晴れやかだった。この試合最大のチャンスで凡退した津田学園・本田大翔にも涙はなかった。
「打てなかった悔しさはありますが、全く後悔はありません。甲子園で試合ができて楽しかったです」
不戦勝で「残念な気持ち」になったワケ
津田学園は試合をする“当たり前”が突如、奪われた。1回戦で叡明(埼玉)に勝利した3日後の8月10日、部内の暴力を理由に次戦の相手だった広陵(広島)が出場を辞退したのだ。日本高校野球連盟によると、不祥事が原因で大会中に辞退するのは初めてだという。
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14日に予定されていた広陵戦が不戦勝となった津田学園は3回戦に駒を進めた。だが、選手たちには落胆が広がった。本田が語る。
「津田学園は過去2回の甲子園で、どちらも2回戦で敗退しています。校歌を2回歌うことをチームの目標にしていました。そのチャンスが2回戦でなくなったのは残念な気持ちでした」
2回戦が不戦勝となり、1回戦から3回戦までの期間が9日間も空く異例の事態となった。高野連は特例で、津田学園に1時間の甲子園練習の機会を設けた。
甲子園で10日ぶりの試合となった横浜との一戦。津田学園は全身で喜びを表現した。エースの桑山晄太朗投手がピンチを切り抜けるとベンチが大きな声と拍手で迎え入れ、桑山は笑顔で応える。安打を放った代打・川辺遼馬が代走を告げられてベンチに戻った際には、佐川竜朗監督とグータッチを交わす。
笑え! 笑え! 笑ってプレーしよう!
3点を追う7回1死満塁で打順が回ってきた本田は仲間に励まされた。緊張している様子を感じ取った三塁コーチャーの横川愛斗から声が飛んでくる。
「笑え! 笑え! 笑ってプレーしよう!」
その言葉で本田の気持ちが切り替わる。

