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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
寺地拳四朗まさかの陥落「行き止まりの道を行ったり来たり…」なぜ陣営に“迷い”が生まれた? 敗戦後、トレーナーの胸を打った寺地の“ある言葉”
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渋谷淳Jun Shibuya
photograph byNaoki Fukuda
posted2025/08/13 17:03
判定結果がコールされた瞬間、うつむいて拍手を送る寺地拳四朗と喜びを爆発させるリカルド・サンドバル
「こうした試合に勝ったあと『よく判断したね』という声を周りからいただきました。ここで足を使うとか、打ち合うとか、切り替えるとか。ほめ言葉なんですけど、逆に言うと判断、決断しなくちゃいけない展開にしちゃってるんです。思い通り試合を進めていれば判断なんて必要ないですよね。最近は『変えなくちゃいけない』と思いながら、結局ここまでそれで勝ってきてしまった。そこが自分の甘さだと感じました」
寺地は長所を存分に伸ばすスタイルで実績を残してきた。ゆえに加藤トレーナーにしてみるとまだまだ手付かずの部分、改善すべきところは少なくない。さらに加藤トレーナー自身も己の知識や経験がまだまだ足りないと感じさせられたという。
試合後、寺地拳四朗が口にした“ある言葉”
世界戦で敗れたのだから、反省をしだせばキリがない。寺地の名参謀は時折頭を抱え、言葉に詰まりながら敗戦を振り返った。そんな試合で唯一、加藤トレーナーが「うれしかった」と表現したシーンがあった。
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「拳四朗がリングから控え室まで歩いているとき『みんなのこと悲しませちゃったな』って最初に言ったんです。矢吹くんに最初に負けたときは自分のことで精いっぱいだった。それが今回は他者のことを思いやっていた。ボクシングを通して成長してくれたなと思いました」
今後について加藤トレーナーは「それは本人次第。ただ、やるにしても、やらないにしても、いまの拳四朗なら本人が納得のいく結論が出せるんじゃないかと思っています」と話した。
33歳の寺地はどんな決断を下すのだろうか。もし再びリングに立つのなら、全幅の信頼を寄せるトレーナーが再び全力でサポートすることだろう。
<前編とあわせてお読みください>

