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「甲子園経験なし、公立高出身のドラ3」才木浩人はなぜ阪神のエースになれたのか「(藤浪晋太郎や藤川球児の球を見ても)コンプレックスなかった」
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金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byHideki Sugiyama / Takashi Shimizu
posted2025/08/19 11:03
阪神のエースとして首位独走のチームを牽引する才木浩人。11勝、防御率1.57はいずれもセ・リーグトップ(8月17日現在)
とはいえ、才木に対するプロのスカウトたちの関心が、ドラフトの目玉選手たちを超えることはなかった。高校3年時の才木は、数多いる有望株の一人にすぎず、それは、3位というドラフトの指名順位にも表れていた。
あくまで一般論ではあるが、才木のような経緯、順位でプロに入った選手の場合、上位指名された選手に対する反骨心を抱くか、その時点での実力差に衝撃を受けることが多い。まして、いざプロに入れば、すでに実績を残した怪物たちがひしめいている。無邪気なまま、まっすぐなままいられる18歳など、そういるものではない。
藤浪、藤川の球を見ても「コンプレックスなかった」
だが、才木は曲がらなかった。
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「コンプレックス……なかったですね。いや、この人えぐい球投げるなあ、とかは思いましたよ。藤浪(晋太郎)さんとか、監督とか、安藤(優也)コーチとか。でも、思っただけでしたね。それで打ちのめされたりとか、俺あかんかも、みたいなのは全然なかった。むしろ、負けたくないって思いの方が強かったかな」
2017年、プロ入り1年目の才木はウエスタン・リーグ14試合に登板し、1勝5敗、防御率4.88という数字を残している。
「全然通用しなかったですね。投げればホームランを打たれる、みたいな試合ばかりでした。でも、まだ自分はピークじゃないし、絶望するというよりは、もうちょっと次はこうしたらいいかな、とか、こういうトレーニングが必要なんちゃうかな、とか。そんなふうに考えてました。シーズン最後の方に、ちょこっとだけですけど一軍で投げさせてもらえたのも大きかったですね」
才木にとって幸運だったのは、この年の阪神が、1位の広島には大きく引き離され、かつ3位のDeNAには十分なアドバンテージを持つという状況で終盤を迎えていたことだった。もう少し緊迫した状況であれば、いかに若手抜擢に積極的な金本知憲監督といえども、二軍で防御率が5点台に近い高卒ルーキーの抜擢は難しかっただろう。自信を格段に深める、とまではいかなかったものの、より具体化した目標を自覚する形で、才木のプロ1年目は終わった。
2年目の'18年は順調だった。春の沖縄キャンプにメンバー最年少選手として参加し、5月27日、甲子園での巨人戦で待望のプロ初勝利をあげる。最終的にチームは最下位に終わり、金本監督はチームを去ることとなったが、シーズン6勝を記録した右腕の未来は、いよいよ順風満帆のように思われた。
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