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「さすがに驚かせられたんじゃないかと」中谷潤人が語った西田凌佑との世界王座統一戦“激闘の真意”…空振りでニヤリも「自分のことが面白くなって…」
text by

二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byShigeki Yamamoto
posted2025/08/20 11:05
WBC・IBF世界バンタム級統一王者となった中谷潤人が、西田凌佑との統一王座戦「激闘の舞台裏」を明かした
3、4ラウンドは前への姿勢を強める西田が反撃に出る。警戒していた左ボディーも多少なりとも食らい、左のカウンターには危険な香りが漂っていた。
「凄く嫌なタイミングで打ってくる。自分の攻撃が終わった後に掛けてくるプレッシャーの速さを意識しているなって感じたので、気が抜けなかった。ルディからは(相手の左ボディーショットから)遠く行くように、打ったら左回りを意識していたのですが、途中止まったときに相手の手数が出ていたのでジャッジに対する印象は悪かったかなとは思います。ただペースは握れている状態だと感じていたし、自分のなかでは決して嫌な状況ではありませんでした」
4R終了後、西田の肩に目をやり…
反撃を許した感覚は中谷になく、防御に長けた西田を崩していく作業を淡々と進めようとしていた。ガードの上からでも叩いてダメージを腕に蓄積させた。作戦は着実に実行されていたのだ。そして3ラウンド途中から、西田の右肩がおかしいと感じていた。4ラウンド終了時には西田の肩に目をやってからコーナーに戻っている。
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「(肩を)ちょっと痛がるような仕草が見えたんです。だからひょっとしたら何か問題があるのかなと気にして観察はしていましたね」
偶然のバッティングによって西田の右目も腫れていた。世界チャンピオン同士の好戦的な戦いは1、2が中谷のラウンド、3、4が西田のラウンドとなったが、より削られていたのは西田のほうだったことが次の5ラウンドに明らかになる。
残り1分だった。
「効いたんじゃないか…手応えはありました」
中谷は右ジャブを3つ突いた後、後ろに下がって西田を呼び込むと右ジャブで固いガードを割ってから、すぐさまコンパクトにガードの隙間を左ストレートで射抜く。西田の動きが止まった。ダメージは明らかだった。
ワイルドから、ここぞのところでスマートに。


