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「妻の支えなしには成し得なかったですが」vs藤井将棋の初タイトル戦、杉本和陽33歳が語る「亡き師匠は…何て言ってくださるんでしょうね」
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by日本将棋連盟
posted2025/08/10 11:02
棋聖戦の3局で藤井聡太七冠と向き合って、杉本和陽六段は何を感じたか
「62手目に藤井棋聖が5筋の位を一つ伸ばしてきたのですが、局面を動かす手だったので少し意外でした。もう少しじりじりとした戦いが続くかなと思っていたので。それに反応して局面の流れを激しくしたんですけど、67手目に飛車取りに歩を打った手が結果的によくなかった。
そこではじっと5七の地点に歩を打っておけばこちらが少し指せていたようです。ただ対局中はチャンスと見て飛車取りに打っちゃいましたね。以下は手駒の金銀を敵陣に打っていって指せるかなと思ったんですけど、むしろ悪かったです」
――この辺りは評価値も乱高下したようですね。実はその直後に評価値が先手側に振れましたが、またすぐに後手側に戻ったようですが?
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「79手目に自陣の金を5七に立って相手の銀にぶつけたんですけど、ここは4筋の歩を突っかけて勝負するべきでした。確かに難しい局面だとは思っていたのですが、あまり発想になかったんです。その変化は玉を上部に脱出される可能性があったので警戒していて、敵玉は狭めて仕留めないと勝機がないと思い込んでしまった。ただ後で調べた時に、その手を指せたとしても負けていると思いましたね」
AIを使う比重を減らして中・終盤を強化しなくては
――最後はバタバタと終局しましたね。4筋の歩を突く手を逃してから5手目に杉本さんが投了されました。
「いや~、こんな簡単に寄ってしまうのか、と衝撃を受けました。自玉の秘孔を突かれましたね。むしろどうやって寄せてくるのかと疑問に思っていたくらいなので」
――17分考えて指さずに投了されていますもんね。第2局は負け方が不甲斐なかったということですが、第3局の自己評価は?
「仕方がないというか、自分の力ではこれぐらいかなという感じがしました。第1局もそうでしたが、敗因は終盤力の差ですね」
――3連敗で敗退となりましたが、シリーズ全体を振り返っての感想は?
「私が振り飛車党ということでも、注目していただいたシリーズだと思います。結果的に振り飛車という戦法自体がまずいと思われなかったのはよかった。将棋は終盤力が勝敗に大きく関係するというのは昔からの理ですけど、それが如実に出てしまいましたね。もう少しAIを使う比重を減らして、中・終盤力を強化しなくてはいけません。とにかく読みの総量を増やしたい。それができれば、もう少し違った景色が見られるような気がするんです」
昭和的なトレーニングも必要かもしれません
――中・終盤力を伸ばすのはプロでも難しいことですが、具体的にどうしていくつもりですか?

