「ユウキとはセッションごとに必ず会話している」角田裕毅のマシンアップデートを後押しした、レッドブル新代表ローラン・メキースの対話力 

　その期待に角田もしっかりと応え、予選でレッドブル移籍後の最高位となる7位を獲得した。

　日曜日のスタート前、角田のグリッドを訪れたのはメキースだった。ホーナーの指定席はフェルスタッペンのグリッドだった。昨年まで所属したセルジオ・ペレスや今年2戦だけ走ったローソン、そのローソンに代わってレッドブルに移籍してきた角田のグリッドに来ることはほとんどなかった。

　しかしベルギーGPでのメキースは、フェルスタッペンだけでなく角田のグリッドにも足を運んだ。しかも、形だけの激励ではなく、かなり長い時間話し込んでいたのが印象的だった。

グリッド上で話し込む角田とメキース代表　©Masahiro Owari

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　レースはウェットコンディションでスタート。全車がインターミディエイトタイヤでスタートしたものの、路面がどんどん乾いていく状況となり、スリックタイヤへ交換するタイミングを計る状況となった。11周目にポイント圏外にいた数名がピットイン。ドライタイヤに履き替えたドライバーのペースが速いことを確認したライバル勢が続々とピットインする中、角田はコース上にとどまった。

　チームはフェルスタッペンと同じ周回に角田のタイヤ交換を行う、いわゆるダブルピットストップ体制をとっていた。しかし、レースエンジニアがピットストップの指示を無線で伝えるタイミングが遅く、角田は予定していたタイミングでピットインできず、1周遅れてしまった。

　その時点で路面はかなり乾いていたため、すでにドライタイヤで走行していたドライバーたちのペースは速く、角田はピットアウトの時点で12位まで後退した。

角田を救ったメキースの言葉

　レース後、メキースはメディアの取材でチームのミスを認め、角田に謝罪した。

「ユウキのピットストップに関してはわれわれのミスだ。マックスと同じ周に彼をピットインさせるつもりで準備は整っており、クルーも出てダブルストップに対応できる状態だった。しかし、われわれからユウキへの指示が遅すぎた。完全にチームの責任だ」

　レース後、うなだれてモーターホームに帰ってきた角田。メディアの対応を終え、遅れてモーターホームに着いたメキースは、しばらくモーターホームの出入口付近にとどまっていた。しばらくして、私服に着替えて自室から出てきた角田を見つけると、ピットストップのミスを謝罪し、角田の肩を何度も叩いて励ましていた。

　角田もそれを聞いてうなずき、最後にサムアップして別れた。

　レースエンジニアとのコミュニケーションミスで入賞を逃した角田だったが、彼を落胆から救ったのはメキースとのコミュニケーションだった。