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「信じられない形勢逆転」金原正徳vsYA-MANはなぜ“超RIZINの圧倒的ベストバウト”になったのか? 42歳で引退発表、試合後に見た「晴れ晴れとした表情」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2025/07/31 11:06

「信じられない形勢逆転」金原正徳vsYA-MANはなぜ“超RIZINの圧倒的ベストバウト”になったのか? 42歳で引退発表、試合後に見た「晴れ晴れとした表情」<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

『超RIZIN.4』でベストバウト級の死闘を見せた金原正徳とYA-MAN

「格闘技やってる以上は強さがすべて」

 金原がプロデビューしたのは2005年。力をつけてきたところでPRIDEが活動を休止し、格闘技の“メジャー時代”が終わった。2007年のことだ。DEEP、パンクラスとさまざまな団体に参戦し『戦極』でフェザー級トーナメントに優勝。大晦日の『Dynamite!!』では山本“KID”徳郁に勝利している。

 さらにUFCにも出場。RIZINではクレベルに勝ち衰えぬ実力を示した。自分でも「勝ったり負けたり」という52戦(31勝16敗5分)だったが、強さでキャリアを切り拓いてきたのは間違いない。

 PRIDEのない時代、多くの選手が「こうすれば稼げる、有名になれる」という大きな目標を見失いがちではあったはずだ。そういう時期を生き抜いて、新時代の格闘技ファン4万人で埋まったさいたまスーパーアリーナで、金原は現役生活を終えた。 

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 だが実感としては「ゴールドジム大森(ジム設置のリングを使う小会場)でも新宿FACEでも意識は同じ」だと言う。どの団体でもどの会場でも、勝つために闘うことに変わりはない。

「いろんな団体、いろんな時代を経験して、今のこの熱量は特別だと思うし、その中心にいれたことは自分をほめてあげたいし。このままブームとしてMMAを終わりにしてほしくないです。そのためには世界で勝てる日本人に育ってほしい。いろんな見方、見られ方があると思いますけど、格闘技やってる以上は強さがすべて、強さが正義だと思うので。そこはみなさんブレずに頑張ってほしいと思います」

ネットでの“罵り合い”ではない方法で…

 これからは日本の選手、日本のイベントが世界一であるために自分の経験を活かしていきたい。これまでライバルだった選手を手助けすることもあるかもしれないと金原。しかし自分がやってきたことを押し付ける気はない。ジムの若い選手たちに「もっと練習しろ」と発破をかけることもないという。

「結局は自分の人生ですからね。僕はサポートしかできない。だからこそ、後輩とか息子が自分の試合で何か感じてくれたらいいなと。背中を見せるというかね」

 今回の試合が決まると、金原は単身タイに渡りトレーニングを積んだ。朝起きると「今日も頑張ろう」、1日の終わりに「今日もよく頑張った」と自分に言い聞かせる日々だった。10代から40代まで、どの年代も厳しかったし、だからこそいい思い出でもある。

「(今後は)役目はたくさんあるし、格闘技の魅力をまた違った角度で伝えていけたら。MMAは競技として最高だよ、楽しいよというのをみんなに伝えていけたらと思います」

 もちろん話題性は大事だ。記者会見など公の場でもネットでも選手同士が罵り合い、それが盛り上がりにつながっている面もある。しかし金原のような選手がいてこその格闘技界だとも思う。

「よくやりましたよ。自分をほめたいです」

 苦闘も栄光も味わい尽くした20年。そのキャリアに、ありったけのリスペクトを。

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