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「信じられない形勢逆転」金原正徳vsYA-MANはなぜ“超RIZINの圧倒的ベストバウト”になったのか? 42歳で引退発表、試合後に見た「晴れ晴れとした表情」
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橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2025/07/31 11:06
『超RIZIN.4』でベストバウト級の死闘を見せた金原正徳とYA-MAN
じつはスパーリング・パートナーでもあったYA-MAN
それができたのも、金原が相手だったからかもしれない。YA-MANは言う。
「試合を通していろいろ教わった気がします。“ここの対応できんのか?”とか体で語りかけてくるような。指導みたいな感じの試合でした」
試合後、リングに2人の息子を上げ、引退を表明する姿を最後まで見届けてもいた。
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「(引退は)金原さんが決めたことなんで。寂しい気持ちはありますけど、金原さんの最後の相手が自分だってことを肝に銘じて、金原さんがやってきたことに恥じない選手になれるよう頑張ろうと思います」
金原は鈴木戦に向けた練習の中で、YA-MANにスパーリング・パートナーを依頼したことがある。それ以来、YA-MANには注目してきたし、闘ってみて成長を感じた。成長したというのは、つまり「格闘技に真面目に向き合ってる」ということだ。そうした姿勢も試合ぶりもすべてまとめて、金原はYA-MANを「いい男です」と表現した。
インタビュースペースで感極まった所英男
晴れ晴れとした表情でインタビュースペースに現れた金原。引退しても「老害にならない程度に」後輩たちをバックアップしていきたいと話した。マスコミに求められて所と2人でのコメントも。
自分より歳上でキャリアも長い所を「見届ける」のも自分の役目だと考えている。「ニコイチなんで」という所と練習するために、これからも体力は落ちないようにすると言う。
「(所は)頑固親父なんでね。満足できるかは分からないけど、自分で納得するまでやってほしい。それに付き合う覚悟はあります」(金原)
「憧れてた金原さんがこんなに頑張って。またファンになっちゃいますね。カッコいいです」(所)
感極まっていたのは所のほうだった。思い残すことがないからなのか、金原の口調は滑らかだ。コメントの中に、格闘技に対する揺るぎない“イズム”も感じられた。
「自分はエリートではないし、才能が特別あるわけじゃなかったし。負けず嫌いというか負けてたまるかこの野郎みたいな精神だけは持ち続けてきたんで。だからこそ諦め切れなかった部分もあります」


