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阪神はなぜ大谷翔平を指名できなかった? 阪神名スカウト「能力は大谷、と言ったのは自分一人」…藤浪晋太郎が象徴する弱点“高卒の育成が苦手” 

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喜瀬雅則

喜瀬雅則Masanori Kise

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posted2025/08/04 17:02

阪神はなぜ大谷翔平を指名できなかった? 阪神名スカウト「能力は大谷、と言ったのは自分一人」…藤浪晋太郎が象徴する弱点“高卒の育成が苦手”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

高校時点の実績では大谷を上回っていた藤浪だが、2025年現在では大谷に水をあけられてしまったと言わざるをえない

「話として持って行くなら『環境』とかっていう風に持って行くのが一番楽なんだろうけど、自分の立場で言ったら、やっぱり『能力』なんですよ、絶対的に」

 1989年から2014年までの四半世紀にわたり、阪神のスカウトを務めた菊地敏幸の分析眼は鋭い。阪神で担当したのは藪恵壹、鳥谷敬、井川慶、川尻哲郎、坪井智哉ら、個性派であり、プロでも実績を残した逸材が多い。

大谷より藤浪を選んだ阪神

 その菊地が担当した一人に、投打の二刀流としていまやメジャーを席巻するスーパースター、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平がいる。

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 岩手・花巻東高は、菊地の担当エリア。その大谷と藤浪は、2012年春、センバツ大会の甲子園で直接対決。3月21日の1回戦で、大谷は藤浪から本塁打を放ったが、試合は藤浪の大阪桐蔭の勝ち。藤浪はセンバツを制し、さらに大谷が出られなかったその夏の甲子園でも優勝し、春夏連覇を果たしている。

 投打の二刀流としての存在感はあるものの、高校での実績となれば、この時点では大阪桐蔭高の優勝投手である藤浪に圧倒的に軍配が上がる。地元・関西の逸材。甲子園の春夏優勝投手。これだけの要素が揃えば、阪神が無視できるはずもない。

地元選手を獲得する、という大義名分

 菊地は、こうした“条件”が整っているから指名をする、という理由付けはそれで構わないという。ただ、重要なのは、その後を見通しておくことなのだという。

「この時、スカウト会議でも言ったんです。絶対、担当スカウトの俺からすれば、大谷なんです、能力で言ったら。3年後、4年後を見たら、200%、大谷の方が上です。でも阪神が藤浪に行かないと、おかしいでしょ、ということになる。あれだけ甲子園で優勝して、大阪の選手で、それこそ藤浪に行かなかったら大バッシングですよ。マスコミだって、なんで藤浪じゃないんだって言うでしょ。だから、ここは一歩下がって、ウチは藤浪で行きますと、それでいいんです。でも、能力はもう大谷ですよ」

 プロ野球も『興行』の側面がある。ファンを喜ばせる。親しみをより持ってもらう。だから、中日や広島は、同じくらいの能力の選手がいて、比較になった場合は、地元の選手を優先するということを公言している。

【次ページ】 あえて大谷にいかなかったことの検証が足りない

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