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阪神はなぜ大谷翔平を指名できなかった? 阪神名スカウト「能力は大谷、と言ったのは自分一人」…藤浪晋太郎が象徴する弱点“高卒の育成が苦手”
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/08/04 17:02
高校時点の実績では大谷を上回っていた藤浪だが、2025年現在では大谷に水をあけられてしまったと言わざるをえない
あえて大谷にいかなかったことの検証が足りない
地元の選手だから獲った——。その大義名分は、十分に説得力がある。ただ、スカウトはその理由だけで、終わってはいけないのだ。
「もう周りは、大谷の力なんてどうでもいいわけですよ。ウチは藤浪で行くんだから、そういうことだから、と。でも、異議は言わなきゃいけない。絶対に能力は大谷ですよと。スカウトとして、それは言っておかないといけない。その意見を言ったのは、自分一人です」
球団全体で、共有しなければならないのだ。
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今回は、藤浪で行く。我々は、関西の球団として、彼は絶対に必要だ。しかし、大谷翔平という選手は、藤浪よりも能力は上。そのことを全員で認識した上で、その後の2人の成長ぶり、キャリアの歩みを比較していかなければならない。
藤浪がオークランド・アスレチックス、大谷がロサンゼルス・エンゼルスに所属していた2023年4月1日、投手藤浪、打者大谷として彼らは10年ぶりにメジャーの舞台で“再戦”を果たしている。とはいえ、2人の同級生の歩みと、2025年の時点での“現状の比較”をすれば、菊地が2012年の時点で強調したことの重みが、よく分かってくる。
球団の方針をブレさせないために
なぜ、あの時、大谷を指名していないんだという“後付けの後悔”は禁物。この未来が予測できたとしても、地元の逸材を優先したという球団の方針をブレさせてはいけない。その一方で、獲得しなかった“評価が上の選手”のその後も、しっかりとトレースしていく。それが、後の指名や育成に繋がっていくのだ。
しかし、そうした“引き継ぎ”が、阪神ではうまくできていないのではないだろうか。
〈つづく〉

